モンゴル訪問中の天皇陛下は12日、この日の訪問先のホスタイ国立公園で報道陣の取材に応じ「豊かな歴史文化、素晴らしい自然に触れることができた1週間だったと思います」と話された。13日に帰国する。
陛下は8日、戦後に抑留先のモンゴルで亡くなった日本人の慰霊碑に供花。祖国に帰れなかった戦争の犠牲者を悼んだ。陛下は「政府庁舎などの建設に従事し厳しい環境にありながら、自分の仕事に力を尽くし、モンゴル国民から尊敬を集めていると聞いています。心ならずも故郷を遠く離れた地で亡くなられた方を雅子とともに慰霊し、そのご苦労に思いを致しました」と話した。
慰霊碑を訪ねた日の夜、フレルスフ大統領夫妻主催の晩さん会で陛下は、自身のビオラで国立馬頭琴交響楽団の演奏に加わり、ともに「浜辺の歌」を奏でた。望郷の歌が聴衆にどう響いたと思うかと尋ねられ、「モンゴルで亡くなられた方々の心に響けば大変うれしいことです」と述べた。
12日、陛下は皇后雅子さまと、ウランバートル近郊で国民的スポーツの祭典「ナーダム」の競馬競技を観戦した。モンゴルの競馬は20キロほどの草原を疾走する。馬への負担を軽減するため騎手は10歳前後の子供が務める。
抜けるような青空の下、両陛下は大統領夫妻とともにゴール手前の草原に40分ほど立ち、ラストスパートで駆け抜ける5歳馬のレースを見つめた。天皇陛下はコンパクトカメラで動画を撮り、雅子さまは双眼鏡をのぞき、ナーダムの花形競技を堪能していた。
その後、ウランバートル中心部から約100キロ西のホスタイ国立公園に足を延ばした。公園は自然界では絶滅したとされる最古の野生馬「モウコノウマ(タヒ)」の保護に取り組んでいる。ダシプレブ所長から、タヒが乱獲などで絶滅危機に陥った原因などについて説明を受け、「生息地はどのような場所ですか」などと尋ねていた。両陛下は大型スポーツタイプ多目的車(SUV)に乗り込んで広大な公園敷地の奥地に生息するタヒを探索し、群れを見つけたという。
宮内庁幹部によると、両陛下は11日に臨んだ開会式を含め、ナーダムについて「モンゴルの歴史や伝統に根ざした自らの文化に、モンゴルの人たちが誇りを持っていることがよく感じられました」と印象を述べた。【ウランバートル山田奈緒】