《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘

7月12日未明、北海道福島町で「男性がクマに襲われた」という通報があり、警察などが付近を捜索。新聞配達を行っていた52歳の男性が倒れているのが発見され、その場で死亡が確認された。
この事態を受けて福島町役場は、同日中に福島町一円にヒグマ警報を発令。
《ヒグマは、生ゴミ等に誘引され市街地に出没している可能性が高くなっております。(中略)ヒグマと遭遇する機会を減らすため、夕方から早朝までの時間帯の外出を自粛されますようお願いいたします》
と呼びかける事態となっていた。北海道猟友会で松前・福島地域の担当者が地域のクマ事情を明かす。
「2年くらい前ですかね、大千軒岳という山がありまして、大学生がヒグマに襲われて死亡する事故がありました。それ以降も、山すそや住宅地での目撃情報はあったものの、街中を悠々と歩いてるっていうのは、これまであまりなかったと思います」
事態が動いたのは18日午前3時半のこと。福島町の住宅街にある藪の中で、ハンターによってヒグマ1頭が駆除された。駆除されたヒグマの体長は208cm、体重218kgで、8歳から9歳と推定されており、男性を襲った個体とは別の個体と見られている。
過去には苦情が殺到した市町村も
クマの駆除をめぐる問題といえば、2023年の秋田県美郷町の事案が記憶に新しい。当時を知る全国紙記者が振り返る。
「秋田県美郷町の畳店にクマの親子3頭が侵入。捕獲された後、猟友会によって駆除されました。地元住民などからは『安心した』などと声が上がる一方、役場には『駆除しないでほしい』などの抗議の電話が殺到。多くが県外からの電話でした。
なかには『クマを殺すならお前も死んでしまえ』などの過激な電話もあり、秋田県知事が『これに付き合っていると仕事ができません。業務妨害です』と言及する事態になっていました」
今回も駆除に踏み切ったことで、福島町役場にも苦情電話が殺到している状況だ。 取材に応じた福島町役場の職員が明かす。
「今朝からですね、ひっきりなしに電話がかかってきています。20件くらいでしょうか(11時取材時点)。『クマを殺すな』という感じで動物愛護団体の方からや、個人の方などさまざまですね。こちらとしては『はい』『はい』とお話しをお聞きして対応している形です。強い口調で、『クマがいる土地に人間が住んでるような形なので、それでクマを殺すのはどうなのか』などとおっしゃる方もいらっしゃいました」
前出・猟友会の担当者は野生クマが人里に降りてくるという流れは止まらないのではと危惧する。
「最近の傾向として、クマがシカの肉をよく食べているんですよ。大雪で餌がなくて死んでしまったシカや、ハンターさんが獲ったあとに残された個体……クマは、そういったものを食べているわけですね。それで、だんだんと肉食に慣れてきている、そんな印象です。
ですから、やはり基本に立ち返って、クマを人里に呼び寄せない取り組みが本当に大事になってきます。ゴミをゴミステーションに早めに出さないとか、クマの餌になりそうなものを長い時間、外に置かないとか、そういった対策の徹底が求められるということですね」
「市街地にクマは出ない」という一般論は通用しなくなってきているのかもしれない。