長野市のJR長野駅前で今年1月、男女3人が刃物で襲われ、1人が死亡、2人が重軽傷を負った事件から22日、半年となった。殺人と殺人未遂容疑で逮捕された同市西尾張部、無職矢口雄資容疑者(47)は、長野県警や地検の調べに黙秘を続けたまま、刑事責任能力を判断する鑑定留置に入っており、事件の動機はわかっていない。地検は来月、矢口容疑者を起訴するかどうかを判断する見込みだ。
事件は1月22日午後8時頃に発生した。矢口容疑者は同駅善光寺口で、同市、会社員男性(当時49歳)を刃物で刺し殺害。バスを待っていた30~40歳代の会社員の男女も刃物で襲い、重軽傷を負わせた。
捜査関係者によると、矢口容疑者は逮捕後の調べに黙秘をしたり、雑談には応じるものの事件への関与について明言を避けたりしていたという。地検は6月、7月11日までの約3か月半としていた鑑定留置の期間を8月12日まで延長した。
鑑定留置では、容疑者は病院などで精神科医の診断を受ける。鑑定の経験があり、精神鑑定の著作もある精神科医で岐阜県立希望が丘こども医療福祉センターの高岡健顧問は、鑑定が延長となった背景について「鑑定医に対する容疑者の話がまとまらず、結論が出ていないのではないか」とみる。
元検事で刑事事件を多数担当する上原幹男弁護士は、鑑定で容疑者から話を聞き取ることができない場合、家族など容疑者をよく知る人から精神科医や検察官が生育歴などを聞き取ることがあるため、時間がかかるケースがあるとする。上原弁護士は「検察側は鑑定書から精神疾患の有無や、疾患があれば事件にどのような影響を与えたかということを考慮し、責任能力の有無を判断していくことになる」としている。