国道の陥没・空洞10年間で1100件超、「破損管に土砂」44%…「1km内で複数」半数近く

全国の国道で2015~24年度の10年間に見つかった陥没・空洞は計1100件超に上り、その4割強が半年前の埼玉県八潮市の道路陥没事故のように埋設管などの破損による土砂の「吸い込み」で起きていたことが読売新聞のデータ分析でわかった。地盤の締め固め不足などの「施工不良」も約2割に上った。さらに、1キロ以内で複数起きているケースが半数近くあることも判明。専門家は、国による維持管理の強化の必要性を指摘している。
読売新聞は、国直轄の国道(約2万4000キロ)を管理する国土交通省の8地方整備局と北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局に情報公開請求を行い、15年度以降の10年間に見つかった陥没・空洞の発生日時、場所、規模、原因、修理方法などを記録した調書を収集、分析した。調書は未作成だが公表されている事例も加えた。
その結果、陥没・空洞は少なくとも計1157件(陥没730件、空洞427件)あり、都道府県別では高知78件、石川63件、鳥取62件、千葉59件、島根55件の順で多かった。
原因別では、埋設管の腐食・破損や接合部の劣化により周囲の土砂が管に流れ込み、地下に空洞が生じる「吸い込み」が509件(44%)に上った。「施工不良」は259件(22%)で、その大半が道路建設時や管路埋設時の地盤の締め固め不足だった。吸い込み、施工不良以外では、木の根の腐食、周辺の斜面の崩壊、地震や台風などが計276件(24%)あった。
同じ路線の1キロ以内で別の陥没・空洞が起きている事例は全体の4割強(521件)を占めた。埼玉県越谷市にある国道4号の「大間野交差点」では22~24年、同じ排水管の腐食・破損による陥没が計3件発生していた。
今回の分析結果を受け、国交省幹部は「国として道路下の陥没・空洞の実態を十分つかめていないのが現状で、早急に調査するとともに、道路下の状況を早期把握できる体制作りを進める」としている。
道路陥没に詳しい桑野玲子・東京大教授(地盤工学)は、「国道は災害時の緊急輸送路に指定されている所も多く、陥没のリスクを放置すれば地震時に頻発して救助や支援が遅れる危険もある。国は地下インフラの管理者と連携して、国道の維持管理の体制を強化する必要がある」と指摘する。
◆埼玉県八潮市の道路陥没事故=1月28日朝、県道交差点で陥没が発生。1983年に埋設された下水道管が破損して管の中に土砂が流入し、空洞ができたのが原因とみられ、陥没は最大幅40メートル、深さ15メートルに拡大した。陥没発生直後に通りかかったトラックが転落し、運転手の男性が死亡したほか、県内12市町で一時、下水道の使用を自粛するよう求められた。

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