台湾でバシー海峡戦没者の慰霊祭 戦後80年、厚労相が初の弔辞

【台北=西見由章】先の大戦中に台湾南方のバシー海峡周辺で戦没した日本人将兵らを悼む慰霊祭が3日、台湾南端の東県恒春にある潮音寺で営まれ、遺族ら約150人が参加した。戦後80年にあたる今年は、戦没者慰霊を管轄する厚生労働相による弔辞の代読が初めて行われた。
バシー海峡では大戦末期、南方に向かう日本の輸送艦船などが米潜水艦や空母艦載機に狙い撃ちされ、10万人以上が戦死したとされる。戦没者の遺体の多くが台湾最南端の恒春半島に漂着したが、外交関係がないために公的な慰霊活動は長年行われていない。戦後70年の2015(平成27)年以降、日台の有志が慰霊祭を開催している。
慰霊祭では対台湾窓口機関、日本台湾交流協会台北事務所の片山和之代表が「わが国の平和と繁栄が戦没者の皆さまの尊い命の上に築かれたものであることに思いを致し、謹んで哀悼の誠をささげる」との福岡資麿厚労相の弔辞を代読した。
実行委員長の渡邊崇之氏は、厚労相からの弔辞が実現したことは「長年のご遺族の思いがようやく国に届いた記念すべき瞬間」とあいさつした。
潮音寺は、バシー海峡で撃沈された輸送船「玉津丸」に乗船し、九死に一生を得た故中嶋秀次さんが私財を投じて昭和56年に建立。玉津丸に父が乗船していた鹿児島県伊仙町の吉岡初枝さん(80)は「お父さん。あなたがお国のため、国民のため、そして子供のためにと命を賭けて戦い、散っていったこの場所で手を合わせにきました」と弔辞を述べた。
バシー海峡周辺の戦没者を巡っては、厚労省が半世紀ぶりとなる台湾での公的な遺骨収集に向けて「日本戦没者遺骨収集推進協会」の職員を近く現地に派遣する方針だ。