平和願い、灯籠流し=原爆犠牲者しのぶ―広島

原爆投下から80年となった6日夜、広島市中区の原爆ドーム前を流れる元安川で、犠牲者の鎮魂と平和を祈る灯籠流しが行われた。灯籠が水面を温かく照らし、多くの人が静かに見詰めた。
毎年訪れている岡村良二さん(81)=同市佐伯区=は、原爆で父と兄を亡くし、自身も1歳の時に爆心地から約2キロの自宅で被爆した。「これからは被爆経験のない人が語り継ぐことが大切」と期待し、灯籠に世界平和への願いを込めた。
父が被爆者という古田弘美さん(62)=同区=は、原爆投下後の焼け野原から復興を果たしたことに驚きつつ、「いまも戦争で苦しんでいる人がいる」と話し、灯籠には「世界の人々が幸せに過ごせますように」と書き込んだ。
広島県東広島市から訪れた主婦(33)は、被爆した祖母を約10年前に亡くした。「ここに来たらおばあちゃんに会えるかな」という気持ちで灯籠流しに足を運ぶようになったといい、祖母への思いや核兵器廃絶への願いを記した。
カナダから旅行で広島に来たという看護師のヘザー・ペイラステさん(44)は、手を取り合う家族の絵などを灯籠に描いた。夫や10歳と12歳の息子もそれぞれ灯籠に思いを込めた。息子たちに対し「(被爆の現実を)体験して感じてほしい」と願った。 [時事通信社]