横浜の花火事故、業務上失火容疑で捜査へ 海保が実況見分 花火師が考える「3つの原因」

横浜市で4日に開かれたイベントの花火大会中に台船が炎上した火災で、横浜海上保安部などは6日、業務上失火容疑で捜査する方針を固めた。捜査関係者への取材で分かった。発生直後、打ち上げを停止する制御システムが作動していなかったことが明らかになっており、海保は同日、神奈川県警と合同で現場を実況見分した。
海保によると、火災は4日午後7時50分ごろ発生した。花火は音楽に合わせて打ち上げる演出で、打ち上げのタイミングをプログラム制御する仕組みだった。発生から約1分後には停止する操作を行ったが、火元とみられる台船では打ち上げが止まらず、主催者側は「制御できなかった」と説明しているという。
花火大会は午後7時半に始まり、8隻の台船から約2万発を打ち上げる計画だった。当時、炎上した台船には5人の花火師が乗船。発生後すぐに全員が海に飛び込んで救助され無事だったが、南西側の台船にも燃え移り、計2隻が焼損した。鎮火したのは発生から約15時間後の5日午前11時すぎだった。
横浜市は5日、花火大会を主催した実行委員会の委員長を務める神奈川新聞の須藤浩之社長に対し、事故原因の徹底究明を要請。市によると、事故を受け、10日にみなとみらい地区で150発の花火を打ち上げる予定だったイベントの開催延期も決定した。
「連鎖的な暴発はまれ」
真夏の夜を彩る打ち上げ花火が、なぜ大規模な火災につながったのか。花火の安全啓発を行う業界団体「日本煙火協会」の専務理事で花火師の河野晴行さんによれば、現時点で考えられる原因として3つが挙げられるという。
1つ目は煙火玉が筒から発射直後に炸裂する「過早発」と呼ばれる現象。2つ目は煙火玉が想定より低い高度で炸裂する「低空開発」。3つ目は、煙火玉が上空で炸裂せず、地上に落下して炸裂する「地上開発」と呼ばれる現象だ。
河野さんは「映像を見る限り、花火事故で最も怖い筒内で炸裂する『筒ばね』の可能性は低いと思われる。ただ、過早発や低空開発にしろ、連鎖的に暴発するケースはまれであり、今後の安全対策を考える上でも原因究明が待たれる」と話す。
経済産業省が公表した「火薬類事故情報の取り扱い」によれば、花火事故特有の暴発現象が起きる要因として、花火自体の製品不良や煙火玉に含まれる火薬粒「星」の燃焼不足、花火師による装薬・装填ミス、筒の固定不備などがある。
河野さんは「陸上での打ち上げと異なり、台船の上では筒の密集度が高い。ただ、最近流行りの音楽に合わせて花火を打ち上げる演出については、今回の事故のように通しでやるパターンではなく、場合によっては間隔を空けながら打ち上げるなどの見直しも、今後の安全対策につながるのでは」としている。
一方、今回の事故で打ち上げを担当した東京都中央区の「日本橋丸玉屋」は自社ホームページで「近隣や来場者に多大なるご心配をおかけした。関係機関と連携して調査を進める」とのお詫び文を掲載した。(白岩賢太)