大阪・関西万博のアンゴラ館の建設工事を無許可で請け負ったとして、大阪府警生活経済課は13日、建設業法違反(無許可営業)の疑いで、建設会社「一六八(いろは)建設」(大阪市鶴見区)の40代男性社長の居住先など関係先を家宅捜索した。
開幕4カ月を迎えた日に異例とも言える会期中の家宅捜索。「一六八建設」の男性社長は産経新聞の取材に、「問題なく取得できていると認識していたが、工事がほぼ完了する3月ごろに無許可であることを把握した」と説明。「工期が迫る中でいまさら仕事を投げ出すことはできなかった」と話した。
一六八社を巡っては、下請け業者への未払い問題も指摘されているが、社長は「元経理担当者に一六八社の資金約1億2千万円を横領された」と支払いが滞っている理由を説明した。
関係者によると、一六八社は令和5年7月に創業。今の社長が6年9月に引き継ぎ、数人で運営、経理作業や事務手続き、下請け業者への支払いなどは全て元経理担当者に一任していた。2月ごろに下請け業者から「工事代金の支払いが滞っている」と連絡があり、元経理担当者に問い合わせたが、連絡がつかなくなったという。建設業の許可を取得する手続きも元経理担当者が担っていたとしている。社長は「支払いが滞っている下請け業者には申し訳ない」と述べた。
一方、元経理担当者は産経新聞の取材に、横領の事実はなく、「一六八社の経営状況は厳しかった。万博の建設工事とは別の工事の支払いなどに使われただけで不正はない」と反論。建設業の許可についても「取るつもりだったが、手続きに不備が生じた」と説明する。
社長は7月、元経理担当者が約1億2千万円を着服したとして、業務上横領罪の告訴状を府警に提出。下請け業者も元経理担当者を提訴した。
下請け業者は5月末、「被害者の会」を設立。万博を巡っては、米国や中国など複数の海外館で、受発注業者間の工事費未払いが発生しており、同会は大阪府や万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)に未払い分の立て替えなど救済措置を求めた。
同会は「『国の事業だから少なくとも支払いの問題はない』という信頼のもとに、過酷な環境で働いてきた」と主張。未払いによる下請け企業の連鎖倒産の恐れもあると窮状を訴える。
府は7月、建設業法に違反し無許可で営業をしていたとして、一六八社の30日間の営業停止処分を決定。同会の要望については事業者間の仲裁などを行う府建設工事紛争審査会や、公的金融機関の融資制度などを活用するよう提案している。