「その常習性は深刻である」 4つの商業施設で女性9名計11件の盗撮・盗撮未遂に関与 35歳無職の男【判決詳報】

福岡地裁小倉支部は7月29日、北九州市内4つの商業施設で9人の女性のスカートの内側を盗撮、または盗撮しようとした無職の濱邉真一被告(35)に対し、懲役1年6か月の実刑判決を言い渡した。
濱邉被告は2025年3月から4月のわずか1か月余りの間に盗撮行為を繰り返していた。
8回の盗撮と3回の未遂、手口は巧妙化
判決によると濱邉被告は2025年3月12日から4月23日までの1か月あまりの間に、北九州市内の商業施設4か所で、合計11件の盗撮行為を行った。
このうち8件が既遂、3件が未遂だった。
特に4月23日には、午前11時24分から午後0時5分までの40分間で北九州市小倉南区のサンリブシティ小倉にいた6名の女性に対して8回もの盗撮を繰り返した。
濱邉被告はスマートフォンを動画撮影状態にして女性のスカートの内側に差し入れ、下着を撮影していた。
他にも3月12日には小倉南区のサニーサイドモール小倉、4月13日には八幡東区のイオンモール八幡東、4月16日には小倉南区のダイレックス下曽根店でも同様の手口で盗撮を試みていたが、これらは未遂に終わっていた。
検察側「常習性は顕著、再犯の可能性も高い」
論告求刑公判で、検察側は濱邉被告の犯行態様と常習性について「大胆で手慣れたもので、悪質である」「起訴されているだけでも僅か約1か月の間で被害者9名に対し、延べ11件もの盗撮に及んでいる」「遅くとも2019年頃から盗撮を繰り返してきた」「常習性は顕著である上、その性癖は根深く、規範意識は著しく鈍麻しており、再犯の可能性も高い」と主張した。
また被害者の心情についても、「被害者Aは、盗撮動画を見た際、思わず泣いてしまうほどのショックを受け、被害者Bは、被害後、気持ちが悪くて外を出歩くことができないと思うほどのショックを受け、被害者Cは、初めての盗撮被害に恐怖心を感じている」と述べた。
そのうえで濱邉被告が被害者に対して慰謝の措置を講じていないことも挙げて懲役2年を求刑した。
弁護側「再犯防止に取り組む意思がある」
弁護側は、濱邉被告が犯行事実を認めていることや、再犯防止プログラムを受講予定であることなどを有利な情状として主張した。
裁判では濱邉被告自身も自身の常習性を重く受け止め、依存症回復施設を頼って問題に対処したいとの意向を示した。
前科歴からも明らかな盗撮の常習性
判決で福岡地裁小倉支部(三芳純平裁判官)は「商業施設において、スカート姿の女性を狙って下方から下着を撮影するという犯行方法であり、他人に最も撮影されたくないであろう部位を狙った侵害性の強い犯行である」と濱邉被告の犯行の侵害性の強さを認定。
被害を知った女性たちについては「多大な嫌悪感、不安感を与えている」と指摘した。
また、福岡地裁小倉支部は濱邉被告が2019年と2021年にも同種の盗撮行為により実刑に処せられていた前科があることを重視。
「前刑からの出所後、再犯防止のために母親にスマートフォンを預けていたが、同人が入院したために自身でスマートフォンを管理するようになると盗撮を再開し、第1の犯行に及び、それが警察に発覚してスマートフォンを押収されると、更に新しい機器を購入して第2以降の犯行を繰り返した。その常習性は深刻である」と指摘した。
被告の情状も考慮し、懲役1年6か月判決
そのうえで福岡地裁小倉支部は濱邉被告が自身の常習性を重く受け止め、依存症回復施設を頼って対処したいと述べているなどの情状も考慮。
濱邉被告に懲役1年6か月(求刑:懲役2年)の実刑判決を言い渡した。