横浜市で20日から開かれていた「第9回アフリカ開発会議」(TICAD9)は22日午前、成果文書「横浜宣言」を採択して閉幕した。宣言では、日本とアフリカ相互の利益に向け、官民連携によるAI(人工知能)など日本の技術を活用した経済成長支援を打ち出した。各国が米国による関税措置による経済への影響を受ける中、開かれた多角的貿易体制の重要性も強調した。
宣言では、成果達成へ向け、「経済」「社会」「平和と安定」を3本柱とした協力策を列挙した。
経済分野では、民間部門との連携の強化により、AIやロボット工学など日本が誇るデジタル技術や先端技術をアフリカで活用推進する意義を訴えた。「安全で信頼できるAIの推進」に向け、AIを巡る国際的な秩序構築への協力も盛り込んだ。
トランプ米政権による関税措置を念頭に、「保護主義の高まりがアフリカの世界市場への参入を制限している」と指摘した。返済能力に見合わない中国の融資による「債務のわな」を巡る問題がアフリカで顕在化する中、「債務の透明性を高める必要性」も明記した。
会議で石破首相は、インド洋とアフリカの一体的な経済発展を目指す「インド洋・アフリカ経済圏イニシアチブ」を提唱した。宣言でも、アフリカとインド太平洋地域などとの連結性向上に触れ、日本が主導する「自由で開かれたインド太平洋」について、「好意的に留意する」と言及した。
社会分野では、ワクチンを巡る協力など「保健システムの強化によって、アフリカの社会開発を支援する」とした。アフリカで干ばつや洪水が増加する中、衛星データを活用した災害リスク削減を例に挙げ、防災分野での日本の貢献を歓迎するとした。
平和と安定の分野では、アフリカの開発や平和、安定に向け民主主義と法の支配が基盤となることも確認した。「国連安全保障理事会改革の機運が高まっている」として、安保理改革に向けて意思疎通を図る考えを盛り込んだ。
広島と長崎に原爆が投下されてから80年を迎えたことに触れ、核拡散防止条約(NPT)体制を強化し、核軍縮・不拡散を推進する考えも示した。
今回の会議は、日本政府がアフリカ連合委員会や国連などと共催し、アフリカ54か国のうち49か国が参加した。次回会議はアフリカで開催する。
石破首相、人材や産業育成の重要性訴え
石破首相は22日午前、TICAD9の閉会式で、アフリカでの課題解決や開発推進に向けて「日本とアフリカが有する豊かな人材や技術、知恵を持ち寄り、繁栄を目指す」と述べ、連携強化による人材や産業育成の重要性を訴えた。
首相はアフリカの抱える大きな課題として防災を挙げ、「気候変動による最も深刻な影響を受けている。アフリカの課題の解決が、日本をはじめとする世界の課題の解決につながる」と指摘した。
共同議長を務めた3日間の討議を「革新的な解決策を共につくる方途について、多くのアイデアが共有された」と振り返り、「日本とアフリカの強固なパートナーシップ(協力)の新しい出発点として記憶に残ることを願う」と締めくくった。