自転車の酒気帯び運転、摘発4000件超…違反と知りながら運転していたケースも

自転車の酒気帯び運転を罰則対象とした改正道路交通法が施行された昨年11月以降、各地で摘発が相次いでいる。今年5月末までの摘発は全国で4000件を超える。各都道府県警への取材でわかった。違反行為だと知りながら運転していたケースもあり、専門家は事故のリスクが高いことを周知していく必要があると訴えている。(金沢支局 武山克彦)
自転車を巡っては、酒酔い運転に対する罰則はあったが、道交法の改正で酒気帯び運転にも「3年以下の懲役(6月以降は拘禁刑)または50万円以下の罰金」との罰則が新設された。
各都道府県警によると、自転車の酒気帯び運転に対する摘発は、昨年11月1日から今年5月末までに全国で4077件(速報値)。福岡の803件が最も多い。東京340件、埼玉328件、大阪278件など大都市のある都府県が上位を占めている。
総務省による昨年10月時点の人口統計を基に人口1万人あたりの摘発件数を算出すると、福岡が1・57件で最多だった。石川と三重が0・95件で続いた。
福岡県警は、摘発件数と人口比の件数が最多だったことについて「取り締まりや対策の強化が影響しているのではないか」と分析する。県は2012年に全国で初めて罰則付きの飲酒運転撲滅条例を施行。県警は自動車と同様に自転車の飲酒運転も摘発を進めてきた。教習所では、ゴーグルを着けて自転車の飲酒運転を体験してもらっている。
石川県は人口比の件数で2位だった。県警は「繁華街が駅から離れていることなども影響している可能性がある」と指摘する。北陸を代表する金沢市の繁華街「片町」は、金沢駅から2キロほど。市内ではレンタル自転車を利用する観光客も多く、県警は「周知に力を入れたい」と話す。
県警によると、違反者は40歳代が35・6%で最も多く、次いで20歳代が19・2%だった。自動車の運転免許を持っていない20歳前後の若い世代もいた。罰則があると知っていたのは違反者の9割に上る。交通指導課は「自転車の飲酒運転に特化した取り締まりをしていないのに、検挙件数がここまで多いとは」と危機感を募らせる。
酒気帯び運転で行政処分を受けたケースもある。三重県伊勢市の40歳代男性は7月、自転車の酒気帯び運転をしたとして、自動車の運転免許停止(6か月以内)となった。「『飲んでも自転車には乗っていい』という誤った考えを持つ人が多い」。そう話す都道府県警の担当者もいる。
桜美林大の戸崎肇教授(交通政策)は「自転車の飲酒運転は危険だと伝えていく必要がある。酒類を提供する店側の協力も求められる」と指摘している。