夏休みが明けるこの時期、気がかりなことの一つが「不登校」です。
福岡県内の不登校の児童・生徒の数は年々増えていて、2023年度は小・中学生と高校生あわせて2万1550人に上り、過去最多となっています。
夏休み明けは「生活リズムの乱れ」や「人間関係に不安を感じる」などの理由から学校に行きたくないと訴える子どもが増える時期のひとつです。
子どもが不登校になったとき、本人は何を求めていて保護者はどう向き合えばいいのか、過去に不登校を経験した男性に話を聞きました。
「学校に行かない選択は悪ではない」
中井健翔さん(20)
「学校に行かないこと自体が終着点・ゴールではなくて、むしろそれが始まり。その後、どうしていくかと考える新たなスタートだと僕は思っている。学校に行かない選択は、必ずしも悪ではないと伝えたい」
福岡市に住む中井健翔さん・20歳。
現在、通信制の大学で日本文学を学んでいます。中井さんは脳性まひで足に障害があります。
小学生の頃、これを理由にいじめにあい、学校に行かなくなりました。
当時、それは、学校に行くより辛い選択だったと言います。
不登校になった途端、「負けてしまった」と・・・
中井健翔さん(20)
「学校でいじめにあっている時は、まだ闘っている認識があった。『いじめと闘っているから僕は大丈夫。負けてない』と思っていたんですけど、不登校になった途端に『自分は負けてしまった』とか『ダメだこの先どうやって生きていこう』と思ったんです」
自信を失い、部屋にこもりっきりになった中井さん。
学校、そして教師のことも嫌いになり、中学校へも行かないという選択をしました。
しかし、14歳のときクラウドファンディングで資金を集め、子どもたちが交流するイベントを開催。
そして、通信制の高校、さらに大学へ進学するために勉強に打ち込むようになりました。
前を向くきっかけを作ってくれたのは母親でした。
”学校だけが全てじゃない”という気づきが転機に
中井健翔さん(20)
「僕の母親が交流会であったり、大学の先生であったり、いろんな人に会わせてくれた時に、学校だけがすべてじゃないというか、一歩外に出れば認めてくれる先生とかもいるってことに気づけて。それがすごくよかったですね」
これまでのコミュニティーとは別の「新しい出会い」が、”転機”になったのです。
不登校の児童・生徒が通う”仮想空間の学校”も
福岡県太宰府市の教育支援センター。
こちらに不登校の児童生徒が通うちょっと変わった学校があります。
それは、職員が向かうパソコンの中。
「夏休みは何をしましたか?」「絵を描いていました」
ここは仮想空間の学校「とびゆめキャンパス」通称「ゆめキャン」
不登校の児童や生徒が、自分の分身のキャラクターを使って画面に現れ、支援教師や市の相談員などとチャットで会話したり、ビデオ通話をしたりすることができます。
話す内容は趣味の話題など、なんでもオッケー。
そして・・・
太宰府市教育支援センター 花田文さん
「教室があり、教育支援センターに出前授業に来てくださった様子を録画して編集したものを用意しています」
太宰府市内の学校の教師たちが収録した動画を視聴して勉強することもできるんです。
復帰が目標ではなく”居場所作り”登校を再開した子供も
ゆめキャンには現在、小学生14人と中学生28人が登録していて、多い日には15人ほどが”仮想登校”しています。
太宰府市の小中学校では25日に学校が再開しました。「ゆめキャン」への参加が、在籍する学校の出席扱いにもなるのです。
太宰府市が「ゆめキャン」を開設したのは2025年6月。休み明けの8月25日から再び登校した利用者もいます。
太宰府市教育支援センター 村上伸一 所長
「一番は居場所作りです。学校復帰のきっかけにはなっていますが、学校復帰が目標ではないと思っています。子供たちの自立を支援する、学習も含めてです。そういう場所になっていけばいいのかなと思います」
中井健翔さん(20)
「やっぱり不登校で1つ思うのは、家庭もちょっと苦しい場所でもあるんですよね。だって親がいて、自分はここにいて、劣等感がすごくて、当時は。だから家庭すらも苦しい。でも学校には戻れない。家庭以外の第3の場所を持つ、そういうのはすごく大事かなと思います」
不登校になった児童・生徒の相談内容は
文部科学省が調査した全国の小中学校で不登校になった児童生徒側から、学校への相談内容です。
一番多いのが、「学校生活に対してやる気が出ない」、ほかには「生活リズムの不調」、「友人関係をめぐる問題など」となっています。
不登校になった児童生徒のうち、学校内外の機関で専門的な相談・指導を受けたのが6割。
4割は受けていないということです。