「野良犬」とパワハラで社員自殺 化粧品会社が遺族に1.5億円支払い

化粧品小売り「D-UP(ディー・アップ)」(東京)に勤務し、自殺した女性社員(当時25歳)の遺族が11日、東京都内で記者会見し、東京地裁の民事調停で会社側から調停金約1億5000万円の支払いを受けることが決まったと明らかにした。決定は9日付で、社長のパワーハラスメントが原因で女性が自殺したことを認め、社長の辞任と謝罪も含まれた。
D-UPは11日、坂井満社長が10日付で退任したと発表し「ご心配とご迷惑をおかけしたことを深くおわびする。信頼回復に向けて全力で取り組む」などとコメントした。
遺族側によると、亡くなったのは2021年4月に新卒で入社した里実さん(名字は非公表)。8カ月後、社長から勤務態度などについて約50分間にわたって「お前、大人をなめるなよ」「世の中でいう野良犬っていうんだよ」などと一方的に叱責され、別の日にも「力のない犬ほどほえる」と人格を否定するような発言を繰り返されたという。
里実さんは22年1月にうつ病を発症して休職。自宅療養中の22年8月に自殺を図って約1年後に亡くなった。労働基準監督署は24年5月に社長のパワハラにより発症したうつ病で死亡したと認めた。遺族が損害賠償を求めて提訴し、25年に入って民事調停に移行していた。
里実さんの姉は記者会見で「妹は将来、化粧品の会社を起業しようと夢に向かって一生懸命頑張っていました。本来、謝罪を受けるべき妹は亡くなっていますが、良い結果になったと伝えたいと思います」と語った。母親は「安全で職場環境の良い会社が増えるよう心から願っております」とのコメントを寄せた。【安元久美子】