南海トラフ「最悪シナリオ」、兵庫県の住宅再建共済の支払い額は積立金の10倍に…財政リスク浮き彫りに

少額の掛け金で、被災した住宅の再建時に給付金を受け取れる住宅再建共済制度「フェニックス共済」のあり方を見直す検討会が中間報告を取りまとめた。制度の存続の必要性を示しつつも、南海トラフ地震を想定した「最悪のシナリオ」での給付額は、現在の積立金の10倍に当たる1437億円に上ると試算。兵庫県が多大な財政リスクを抱えることが浮き彫りになった。(岡さくら)
フェニックス共済は阪神大震災の際、住宅ローンなどを抱えて住宅再建が困難な被災者が多かった教訓から、県が2005年9月に設けた。県内に戸建てやマンションを所有する人が対象で、年5000円の掛け金を払えば、全半壊の再建時に最大600万円、補修時に最大200万円を受け取れる。
24年度末時点の加入率は9・4%。地域別では南あわじ市が最も高く、30・4%。神戸市は7・2%、尼崎市は5・5%にとどまり、賃貸の割合が高い都市部では低い傾向となっている。
県議会の調査特別委員会が今年2月にとりまとめた調査報告書で、同共済を「県財政にとって大きなリスクを抱えていると言わざるを得ない」として、廃止も含めた抜本的な見直しを要望。これを受け、県は5月、有識者による検討会を設置し、リスクの検証などを行うことにし、今月1日の中間報告で災害規模ごとの試算を公表した。
それによると、「200年に一度」の大規模地震が発生した場合、過去の給付状況に基づいて算出した実績額は59・5億円。半壊以上の建物は全て再建するという想定で算出した最大額は、176・5億円となった。また、マグニチュード9想定の南海トラフ地震が和歌山県南方沖で発生した場合は、実績額が501億円。最大額は1437億円となり、24年度末時点の積立金約143億円の10倍となった。
中間報告では、給付実績もあり、制度存続の必要性を示した一方で、制度創設後に南海トラフ地震の被害想定が発表されるなど、当初に比べて資金不足になる恐れは高まっていると指摘された。給付額が積立金を上回った場合、県が資金を借り入れて不足分を支給することになる。こうしたリスク回避のための対応策として▽給付金の減額▽加入者の負担金の増額▽県が再保険を活用▽給付金支払限度額の設定――という四つの案が示された。
検討会は11月頃に最終報告を取りまとめ、県は制度の変更を検討するという。県防災支援課は「財政リスクも含めて制度への理解や周知につなげるとともに、持続可能なものとして継続できるよう努めていく」としている。