【解説】カギを握る党員票 小泉氏が“序盤戦優位”も…総裁選の行方は?

自民党の総裁選挙が22日に告示され、5人の候補者が一堂にそろった演説会でそれぞれの政策を訴えました。総裁選は国会議員票295票と党員・党友票295票のあわせて590票をめぐって争われ、来月4日の投開票で新総裁が選出されます。
そこで「総裁選のカギを握る“党員票の行方”」をテーマに、日本テレビ・政治部官邸キャップの平本典昭が解説します。
──自民党総裁選は国会議員票295票、そして党員・党友票295票合わせて590票で争われますが、そもそも党員票とはどんなものですか?
いわば自民党の“ファンクラブ”みたいなもので、全体で91万人いて、年間の党費4000円支払った人が党員になれる仕組みです。
──今回は5人で争われます。選挙のシステムとしては、1位の候補者が過半数を獲得すれば当選となります。過半数を得る候補者がいない時は1位と2位、上位2人による決選投票で決まります。
この党員票が実は、自民党総裁選全体の行方のカギを握ると言われています。
──日本テレビでは党員・党友と答えた人を対象に、誰を支持するかを独自に電話で調査しました。結果は1位・小泉氏32%、2位・高市氏28%、「決めていない」人が14%。決めていない人が一定数いるので、情勢は変化する可能性がありますが、実はこの順位は、全ての人を対象にした世論調査とちょっと違います。9月のNNNと読売新聞が行った世論調査では、1位・高市氏29%、2位・小泉氏25%。自民党員・党友の人気と世論の人気に、少しギャップがある結果になりました。
小泉氏と高市氏、1位が逆転しています。一般世論では高市氏が人気な一方で、自民党員からは小泉氏の方が人気が高いのが最近の傾向です。その理由は「世代間のギャップ」と言われています。
多くの自民党議員が「党員が高齢化していることが要因」という声を聞きます。小泉氏は特に高齢者から人気が高く、党員調査だと人気が高くなるとみられています。
小泉陣営の幹部からは「思ったより、よい数字だ」「党員に強い」、高市陣営からは「まだまだここから伸びる」「逆転可能だ」といった声も聞きます。
──では、支持する割合で295票の党員票を換算してみると、1位・小泉氏95票、2位・高市氏83票、3位・林氏45票となります。ここに22日に行われた陣営の出陣式に来た議員の数を加えます。この数字をどうみますか?
今回の総裁選は、小泉氏が一歩リード、続いて高市氏、そしてその2人を林氏が追いかける展開となっています。多くの議員が「序盤戦は小泉氏優位」とみていますが、これから議員、党員ともに支持が変わる可能性はあるので、1つの序盤戦の目安かなとみています。
──党員の支持が、去年とどう変わったのかを分析すると、去年の総裁選は9人が立候補。今年は5人に減りました。減った4人分の党員票が誰に上積みされるのか。今年出ている5人の候補者が去年の総裁選で実際に獲得した票の割合は、高市氏29%、小泉氏17%、林氏8%、小林氏5%、茂木氏4%でした。では、今回の調査で9人が5人に減って、どういう変化があるのか? 高市氏は28%、小泉氏は32%、林氏は15%、小林氏は7%、茂木氏は5%。平本さん、この結果はどうみますか?
9人が5人に減るので基本増える、という環境の中、高市氏が伸び悩んでいます。前回立候補した人の票の受け皿になれていない。一方で、小泉氏、林氏などが受け皿になっていると言えそうです。
中でも最注目は「石破票」の行方です。今回、小泉氏が約40%を獲得するなど、受け皿になったことが大きい。逆に、高市氏は11%で受け皿になれなかったことが伸び悩んだ要因となったとみています。
石破陣営の幹部は「石破さんに去年投票した人は小泉さんか、林さんにしか投票しないだろう」、「高市さんに10%いるのも高いくらいだと思う」という声すらありました。
小泉陣営の幹部も「小泉さんが石破総理の辞任を促す形になり、石破票が逃げないか不安だったが、安心した」と話していました。
──なぜ小泉氏は、序盤戦を優位に進めているのか? そこには2つの要因があるということですね?
まず1つ目が「出馬会見の『明暗』」。どういうことか?
高市氏の会見と小泉氏の会見を比べると、多くの自民党議員が「小泉氏の会見の評価が高かった」という指摘が多いんです。
高市氏は「給付付き税額控除」など減税策を打ち出しました。ただ、会見では司会の議員が記者をあてる際に「顔が濃い方」などと指名し、のちに謝罪に追い込まれた「失態」もありました。
小泉氏は5年で平均賃金を100万円増やすことを目指すと主張する一方で、「選択的夫婦別姓」には慎重な姿勢で事実上、持論を「封印」することもありました。私は、小泉会見を見て「去年と全く違う」と感じました。
もう1つ、特徴がありました。22日の会見で目立ったのは、目を下に落として「原稿を読む姿」だったんです。
──原稿を読むことはあるのでは?
去年は原稿を読まずに、自分の言葉で語った印象がありましたが、今年は原稿を読む「守りの会見」になっている。
質疑応答の場面で私たちが数えたところ、約40分で114回も原稿に目を落としていました。去年と比較すると約30分で63回と、今回はかなり「原稿を読む姿」が目立ちました。
持論を封印することで物足りないという声もあったが、党内からは「『攻め』だけでなく『守り』もできる。安定感をアピールできた」と評価する声もありました。
──そして「小泉票の伸び」のもう1つの要因が、小泉陣営の「進化」。小泉陣営には3つのグループがあるということですが?
まず小泉氏と年齢が近い「同世代グループ」。小泉氏を支えてきたコアな応援団とみられますが、信頼できるメンバーでありながら去年、失速したのも「若い議員が中心で経験不足を露呈した」という指摘もありました。
ここに今回は、2つ応援団が加わりました。1つは「先輩・家庭教師グループ」。これは、経験豊かなベテラン勢です。代表的なのは岸田政権を支えた木原誠二氏、農水相などを務めた斉藤健氏。2人とも官僚出身で官邸の中で働いたり閣僚経験などもあるベテランです。
ある陣営幹部は「2人が家庭教師のようになって会見や政策の方針を指導している」と話しました。小泉氏持ち前の「攻めの発信」だけでなく「守りの強さ」が新たに生まれていったと感じています。
さらに「ライバルグループ」。去年戦った加藤勝信氏、河野太郎氏が「チーム小泉」に加わりました。この2人が加わったことで、2人を去年支えたメンバーの多くも小泉支援に回るとみられ、去年のライバルが「塊」となって支援に回りそうです。
こうした進化で序盤戦を優位に進めているという見方が出ています。
──小泉陣営は盤石なのでしょうか?
そうとも言えないんです。去年、何があったか? 陣営幹部は「去年のように失言などで失速しないかは不安だ」と話しています。
──去年の自民党総裁選で、日本テレビが3回行った党員調査の結果です。1回目は高市氏17%、小泉氏18%で小泉氏が上です。2回目は高市氏22%、小泉氏19%。3回目は高市氏28%、小泉氏14%。小泉氏は下がって、逆転しています。実際の得票でも、高市氏が109票、小泉氏が61票という結果になりました。
小泉陣営にとっては去年の「逆転劇」は、トラウマとなっています。去年も序盤戦では「小泉氏優位」と言われましたが、候補者同士の論戦で経験不足を露呈し失速し、1回目の投票で石破氏、高市氏に敗れてしまいました。
小泉陣営の幹部は「去年の悪夢が起きないようにしないといけない」と言っています。
ある高市陣営の関係者は「小泉さんは今がピーク。論戦を経て、支持を獲得できる」という声が出ています。
──告示から12日間、何に注目しますか?
まず、論戦で情勢が変化する可能性があります。候補者1人1人のリーダーとしての資質を、まず見極める必要があります。
もう1つは、自民党全体が問われています。参院選で「給付か減税か」の議論をしましたが、多くの人が投票に行かれたと思います。約2か月たちますが、党内の混乱でなにも結果が出ていません。
有効な物価高対策を、野党の力を得て1日も早く結果を出していけるか、自民党全体にも厳しい目を向けていかないといけないと思います。