最高裁が保釈のあり方議論へ 大川原冤罪受け裁判官集めた研究会

化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件を受け、最高裁は全国の裁判官を対象に保釈のあり方を議論するための研究会を開くことを決めた。得られた知見を全国の裁判所で共有し、適切な保釈の運用確保につなげる狙いがある。
外為法違反で逮捕・起訴された大川原化工機の元顧問、相嶋静夫さん(享年72)は、胃がんが見つかりながらも保釈が認められず、被告の立場のまま病死した。警視庁と最高検は検証結果を公表したが、裁判所は憲法が「裁判官の独立」を保障しているため、個別の裁判官の保釈判断の是非について検証のような動きは起こせなかった。
一方、事件を契機に、各地の裁判所の内部では保釈に関する議論が活発化。関係者によると、東京地裁では、今回のように証拠関係が複雑な事件を念頭に、裁判官同士で保釈に関する議論が行われているという。
最高裁は、各地の裁判所での議論の状況を共有したり、さらに議論を深めたりする必要があると判断。裁判官らの研修を担う司法研修所で2026年1月に専門の研究会を開き、保釈に関する意見交換を行うことを決めた。全国で刑事事件に携わる裁判官約40人が集まる見通し。
具体的な協議事項は参加する裁判官に委ねられるが、保釈を認めない理由となる「罪証隠滅の恐れ」をどう判断するかや、裁判官が職権で保釈を許可することができる「裁量保釈」のあり方などが想定される。外部講師を呼ぶことも検討するという。状況次第では継続的に議論の場が設けられる可能性もある。
大川原化工機代理人の高田剛弁護士は「裁判官の独立は検証を避ける理由にならないと考えるが、最高裁が動いたこと自体は評価したい。保釈の運用が抜本的に変わるよう、現場の裁判官に対する明確な指針を打ち出すべきだ」と話した。
相嶋さんの保釈を巡っては、最高検が8月に「胃がんが見つかって以降はあえて保釈請求に反対しないなど柔軟な対応をとることが相当だった。深く反省している」とする検証結果を公表している。【三上健太郎、遠藤浩二】