【永田町番外地】#46
事実上、小泉、林、高市の3候補がしのぎを削った自民党総裁選。終わってみれば結局のところ党の再生にも挙党体制にもほど遠く、国民有権者にはむしろ機能不全、回復不能の自民党を強く印象付けたことだろう。
「小泉をコントロールする菅義偉、再登板への意欲を隠さない岸田文雄、石破以外なら誰でも良かった引退間近の麻生太郎。この元首相3人の思惑も入り乱れ、政策論争より政局優先の総裁選に終始したことが残念です」
とは、自民党の某ベテラン職員の落胆である。
確かに、小泉、林の現職閣僚は石破政権の継承を訴え、高市元総務相は故・安倍晋三元首相の後継を名乗ったが、明確な対立軸を打ち出すにいたらず。憲法改正、安保外交、皇統問題、夫婦別姓、脱炭素代替エネルギー、税制・社会保障制度、人口減少・外国人労働者、政治資金・選挙制度、国会改革等々、保守政権与党の代表選であれば、あってしかるべき論争を素通りした総裁選だった。
「進次郎以外はどの候補も論客ですからガンガンやり合ったら盛り上がったでしょうが、そうなると進次郎に恥をかかせ、イジメているようで見栄えが悪い。何より後ろに控える菅さんを敵に回したくなかった。われわれ報道機関も含め、進次郎はまさに腫れ物でした」(全国紙デスク)
つまり、小泉が後ろ盾とする菅の威光が、自民党総裁選をかつてないほどにつまらなくしてしまったようだ。
周知のとおり、菅は石破首相の後見役であり、また、その石破首相に引導を渡したのも菅だった。
首相退任後、脳梗塞で倒れて以来、表舞台に立つ機会は減ったが、その存在感、政治的影響力は元首相3人の中で頭一つ抜きんでているといっていいだろう。
■野党の幹部もみ~んな子分!?
その菅の政治力の源泉となるのは、やはり8年近くに及ぶ安倍内閣の官房長官時代に培った経験と人脈であろう。
「安倍首相は、国家戦略特区や構造改革特区、外国人労働者の雇用拡大など、内政の目玉政策を菅さんに丸投げしていました。それをいいことに、菅は首相直下の日本経済再生本部や産業競争力会議の担当相や官僚人事を一手に握り、かつ官邸主導を演出して党や国会、野党との調整役をしてきた経験が今に生きています。総裁選を競い合った連中も菅に引き立てられたかつての部下ですから頭は上がらない。維新の馬場、遠藤や国民民主の榛葉も“菅別動隊”ですから、過半数割れの政権運営で菅の存在感はいよいよ増すことになりそうです」(前出の全国紙デスク)
“菅々しい”日本の政治に、国民の気持ちはよどむばかりだろう。=文中敬称略 (特命記者X)