三菱UFJ銀行の貸金庫から顧客の金品を盗んだとして、窃盗罪に問われた元行員の山崎由香理被告(47)に対し、東京地裁は6日、懲役9年(求刑・懲役12年)の判決を言い渡した。小野裕信裁判官は「安全と信じて貸金庫を利用した被害者に落ち度はない。まれにみる悪質な犯行だ」と述べた。
判決によると、山崎被告は2023年3月~昨年10月、同行練馬支店と玉川支店の貸金庫から、顧客が預けた現金約6000万円と金塊29個(約3億3000万円相当)などを盗んだ。
判決は、山崎被告が支店長代理などの立場で貸金庫の予備鍵を使って窃盗を重ねていたとし、「限られた者にしかできない手口でセキュリティーを無力化して犯行を繰り返しており、強く非難されるべきだ」と指摘した。
さらに、山崎被告がFX(外国為替証拠金)取引や競馬で生じた損失の穴埋めのために貸金庫内の金品に手を付けたとし、その発覚を免れるため、来店頻度が低い別の利用者の金品を移し替える工作も行っていたと言及した。盗んだ金をFX取引で増やそうとして被害を拡大させたとも述べ、「短絡的に犯行を続けた経緯に酌むところはなく、刑も見合ったものにすべきだ」とした。
三菱UFJ銀行によると、事件の被害者は起訴事実の犯行を含めて約70人に上り、被害総額は約14億円。判決は、山崎被告が銀行の調査や警察の捜査に余罪を含めて包み隠さず説明したことで一部の被害回復につながったとしつつ、「回収できた金額は一部にとどまり、過大に評価できない」とも述べた。
小野裁判官は判決言い渡し後、「どこに問題があり、どう引き返すべきだったのか、深い考察をしていくことが、先の社会復帰に必要になる」と説諭した。
貸金庫を巡っては、他の金融機関でも同種事案が相次いで発覚したことを受け、金融庁が5月、金融機関への監督指針を見直し、貸金庫での現金保管の禁止や管理の厳格化などを求めた。