[ドキュメント 自民新総裁]
キングメーカーが動き出した。
5日、自民党の高市総裁が新執行部人事を相談した相手は麻生太郎最高顧問だった。約1時間の会談を終え、党本部から出てきた麻生氏はトレードマークのハットに手をやり、満足げな表情で車に乗り込んだ。
麻生氏は「高市氏勝利の最大の功労者」(党関係者)だ。決選投票で自身が率いる麻生派議員(43人)に高市氏支持で号令を出し、国会議員票で小泉農相を上回る流れを作った。
政権の指南役としても期待がかかる。「首相経験者でキャリアが他の国会議員と違いすぎる」(若手)。安倍晋三・元首相と盟友関係を築き政権を支え、岸田文雄・前首相とは茂木敏充・前幹事長を加え「三頭政治」を敷いた。政権運営の要諦を熟知している。
一方で、党内唯一の派閥を率い、数の力で影響力を行使する姿は「古い自民党の象徴」に映る。石破首相に近い平デジタル相はかねて、麻生氏が流れを作る政治状況を「党が先祖返りする」と批判してきた。「国民から自民党は変わっていないと見られるのではないか」と不安がる議員もいる。
麻生氏は昨年の総裁選でも高市氏を支持したが、この時は石破氏に敗れた。挙党一致のため党最高顧問に就いたものの、事実上は「非主流派」だった。
今回は雪辱を果たした。同じくキングメーカーと目されていた菅義偉・元首相は支持した小泉氏の敗北とともに影響力低下が避けられない。麻生氏は先月20日、85歳の誕生日を迎えた。周囲はその壮健さに驚くばかりだ。
4日誕生した自民党新総裁を巡る動きを追う。