ノーベル化学賞を受賞した北川進さんは、後進の育成に力を注いできた。教え子に常に説いているのは「オリジナルな研究をしろ」「研究を楽しめ」だ。多くの教え子らに博士号を取得させ、世に送り出してきた。
京都大教授の堀毛悟史(ほりけ・さとし)さん(47)は、博士号の学位を取得して米国に留学した際、北川さんに救われた経験を今も忘れない。研究者として先行きが不透明だった留学中に、わざわざ会いに来てくれた。ワイナリーを回るツアーに一緒に参加したり、相談に乗ってくれたりした。
空港で別れる際にも、握手をして「しっかり研究をやっていたら見てくれている人がいる。しっかり頑張りなさい」と激励してくた。堀毛さんは「忙しい中、自分の様子を見に来てくれたことに感動した」と語る。
東京大准教授の細野暢彦(のぶひこ)さん(42)は、自分の結婚式で北川さんがスピーチをし、「将来とても役に立つ有意義な研究を彼はしている」と力説してくれたことがうれしかった。
飲み会の席では野球の話をするなど「気さくで話しやすいフランクなおっちゃん」の一面もある北川さん。京大特定拠点准教授の樋口雅一さん(50)は、酒を酌み交わしながら「若手のプライドやこだわりを尊重し、能動的な研究をさせることを心掛けている」と明かされたという。