7月投開票の参院選で、老人ホームの関係者が入所者35人になりすまして不正投票をしたとされる事件で、当時エリアマネジャーだった男らが、入所者に無断で選挙管理委員会に不在者投票用の投票用紙の交付を請求したとみられることが18日、捜査関係者らへの取材で分かった。大阪府警はすでに公選法違反(投票偽造)の疑いで施設関係者の男女3人を書類送検。数十人規模の投票偽造事件の摘発は異例という。
総務省によると、不在者投票は、仕事などを理由に選挙当日に投票所へ行けない人のために設けられた制度。選管が指定した施設の入所者も利用できる。
入所者から依頼を受けた「管理者」が、選管に投票用紙を請求。「立会人」のもとで投票用紙に候補者名を記入し、管理者が投票用紙を選管に送付する。
捜査関係者によると、男らはこの制度を悪用。入所者から依頼されていないのに、管理者として選管に投票用紙を請求し、無断で投票したとみられるという。
関係者によると、住宅型有料老人ホームは、「ハイビス八尾」(大阪府八尾市)と「ハイビス泉大津」(同府泉大津市)の2施設。書類送検された3人は、エリアマネジャーとして両施設の運営を統括していた30代男▽ハイビス八尾の事務員の20代女▽ハイビス泉大津の施設長だった20代女。
男の書類送検容疑は共謀し、7月中旬、両施設に入所する50~90代の計35人分の投票用紙に本人に無断で特定の候補者の名前を記載し、投票を偽造したとしている。
ハイビス八尾では男が不在者投票の管理者となり、事務員が代理投票補助者を担当。ハイビス泉大津では男の指示のもと、元施設長が管理者を務めていた。
関係者によると、投票先は自民から比例で出馬して落選した斉藤正行氏。自身のホームページによると、全国介護事業者連盟の理事長を務めている。