「NHKが趣味」元会長の海老沢勝二さんが死去 91歳 強力なリーダーシップでハイビジョン推進

NHK(日本放送協会)会長、大相撲の横綱審議委員長などを務めたジャーナリストの海老沢勝二(えびさわ・かつじ)さんが19日午後10時5分、誤嚥(ごえん)性肺炎のため、死去した。91歳だった。
アナログからデジタルへの転換期に、NHKの顔としてデジタル化や通信と放送の融合などの旗振り役を担った海老沢さんが、91年の生涯を終えた。
茨城・潮来市出身。1957年4月にNHKに入局し、一貫して報道畑を歩んだ。放送総局副総局長、NHKエンタープライズ社長、NHK副会長を歴任し、97年に会長に就任。2001年にはBS、03年には地上波でもデジタル放送をスタートさせ、デジタルテレビ向けのデータ配信サービスなどインターネット関連事業との融合に尽力した。
「NHKが趣味」と自認するほどの強力なリーダーシップで、ハイビジョンの推進やアジア戦略などの国際化にも貢献。02年には日本人としては3人目となる「国際エミー賞」経営者賞を受賞。毎月の定例会見では「だんご三兄弟」や「冬のソナタ」や話題の現象、スポーツ中継についての所感をリップサービスする姿でも知られた。
しかし、会長3期目の2004年、チーフプロデューサーの番組制作費着服事件が発覚。着服額が数千万円にいたったことや「NHK紅白歌合戦」の制作費も含まれていたことなどが大きな衝撃を呼んだ。その後も局員の不祥事が相次いで報じられ、国民の受信料支払い拒否は70万件(05年3月当時)にものぼった。「開局以来最大の危機」と呼ばれるこの騒動の責任を取り05年1月に会長職を辞任した。
辞任後はNHK顧問に就任するも視聴者からの抗議を受け、委嘱から3日で辞退。06年に読売新聞社調査研究本部顧問、07年に横審の委員長に就任。横審では協会の八百長疑惑や朝青龍の素行不良騒動など角界の不祥事に向き合い09年に退任した。協会の外部理事、評議委員会議長などを歴任した。08年には、日本ゴルフツアー機構(JGTO)理事に就任し、会長、名誉会長などを務めた。
◆海老沢 勝二(えびさわ・かつじ)1934年5月5日、茨城・潮来町生まれ。早大第一政治経済学部政治学科卒業後、57年に記者としてNHK入局。91年NHKエンタープライズ社長に就任。93年に専務理事94年に副会長、97年7月に会長に就任した。日本赤十字社常任理事、アジア太平洋放送連合(ABU)会長なども歴任していた。