〈自維連立〉「数ヶ月で終わる“仰天シナリオ”も……」閣外協力の裏にあった維新の“時限爆弾”…高市首相誕生でささやかれる、早期の連立崩壊の可能性

自民党の高市早苗総裁(64)と、日本維新の会の吉村洋文代表(50)は10月20日、連立政権の合意文書に署名した。10月21日の国会において、両党による連立政権が樹立されるが、果たして“新連立”の行方はいかに。
【画像】党首から“グッジョブ”と言われた自民党会派入りの議員
自民ベテラン議員「閣外協力で落ち着いて、本当によかった」
自民党と日本維新の会の連立政権の樹立に向けた党首会談が20日午後6時過ぎから国会内で行われ、高市総裁と吉村代表が合意文書に署名した。
両党の連立合意文書によれば、食料品に限った消費減税ゼロ%については、2年間限定で行うことも視野に「法制化の検討を行う」とされた。
首都機能を補完する「副首都構想」を巡っては、「来年の通常国会で法案を成立させる」を目指すと明記された。企業・団体献金の廃止については、いまだ両党の隔たりが大きく、高市氏の総裁任期である2027年までの実現を目指し、継続協議をするという。
さらに、維新が重要視してきた衆院議員定数の削減については、「1割を目標」にするとされ、臨時国会で議員立法案を提出することで合意した。
ただ、議員定数削減については「民意の反映を阻害する」といった異論も多く、難航も予想される。
維新から閣僚は出さず、閣外協力にとどまる。馬場伸幸元代表の盟友・遠藤敬国対委員長(57)が総理補佐官に起用されるのみとなる見通しだ。
遠藤氏は維新で国会対策委員長を長く務め、与野党問わず幅広い人脈を誇ってきた。
連立協議を巡っても、「遠藤がいないと話にならない」(自民幹部)と言われるほど、自民党からの信頼が厚い。ちなみに、若い頃から秋田犬のブリーダーとして名をはせた一面があり、今も公益社団法人・秋田犬保存会の会長を務めている。
「維新内部では複数の閣僚ポストを狙うのではないかとささやかれていたが、維新は所属議員の不祥事が多いと指摘されてきた。仮に、大臣をはじめ政務三役を出せば、国会の予算委員会などで追及されてしまい、高市政権の“時限爆弾”となりかねない。そのため安全策をとったという評価もあります」
一連の動きに対して、維新と対峙してきた自民党大阪府連に所属する自民現職は「高市さんが総理になりたいという気持ちはわかるけれども、維新と戦ってきた我々の立場はどうなるのか。地域支部の支部長を辞めることも考えています」と漏らす。
いっぽう、高市氏と近しい自民党のベテラン議員は、こう本音を吐露した。 「閣外協力で落ち着いて、本当によかった」
この議員によれば、両者の関係が「閣外協力」という限定的な関係にとどまったことで、維新との連立は今後、見直しやすくなると指摘する。
「今回一番大事なのは、確実に首班指名選挙で勝ち、高市さんが総理になることです。当然ですが、総理になれば、解散権をとれます。まずは臨時国会で、ガソリン税など物価高対策で協力し、実績をつくったところで解散すればいい。
目玉政策を打ち出した上で、支持率が高いうちに解散。それで自民党の議席を取り戻す以外に政権を安定させる方法はないでしょう。もちろん、維新との合意文書はあるわけですが、選挙後の連立の組み直しの可能性は、ゼロではない」
解散総選挙に立ちはだかる壁
確かに、高市氏の周辺では「来年1月の通常国会の冒頭で解散すべき」との声も出ている。無論、それで自民党単独で過半数を取り戻すことは難しいだろう。選挙後は、いずれにしても、連立のパートナーが必要になってくるとみられる。
「選挙後の議席数次第ですが、そこで、より高市氏と経済政策が近しい、国民民主と連立を組み直すというパターンも考えられる。というのも、高市さんは総裁選で診療報酬や介護報酬の引き上げを主張していましたが、これは財政の考えを転換しないとできない。
“身を切る改革”を信条とする維新と組んでいる限り、こうした政策の実現がなかなか難しくなるという見方もあります」(前出・自民党ベテラン議員)
つまり、維新との連立は数ヶ月で終わるという“仰天シナリオ”もあるというのだ。ただし、解散総選挙をするにしても自民党につきまとうのが、自民党派閥を巡る裏金事件である。
高市氏は総裁選期間中からいわゆる裏金議員の起用に積極的な立場をとってきた経緯がある。実際、新執行部では、旧安倍派幹部の萩生田光一元政調会長(62)が、幹事長代行に起用された。
参院自民党でも、旧清風会(参院安倍派)の山本順三元国家公安委員長(70)が参院政策審議会会長に、同じく岡田直樹元内閣府特命担当相(63)が参院幹事長代行に就任するなど、裏金事件への関与があった面々が執行部入りしている。
「萩生田氏の起用は、公明党の連立離脱の一因になったとも指摘された。だが、高市氏もさすがに危機感を持ったのか、参院自民党からの閣僚人事について『今回は旧安倍派の方々を大臣にするのは難しいわね……』と周辺に漏らしていた。
裏金問題の再発防止策を含めて、もう一度何らかの整理をつけない限り、解散総選挙が難しい面があるのは事実です」(高市氏周辺)
そもそも維新と連立を組んだとはいえ、与党が衆参で過半数を占めるまでには至っていない。首班指名選挙を巡っても、高市氏自身が日本保守党の百田尚樹代表(69)や、参政党の神谷宗幣代表(48)と面会し、協力を呼び返るなど、多数派工作はさまざまなかたちで続いている。
その一環が、NHKから国民を守る党(NHK党)の齊藤健一郎参院議員(44)が自民党会派に入ったことだ。
「もともと齊藤氏と自民党の西田昌司参院議員(67)は個人的に親しかったそうです。齊藤氏も行き場がなくなっており、2週間ほど前に、西田氏に会派入りの相談をした。その後、西田氏が、石井準一参院幹事長(67)に相談し、松山政司参院会長(66)が了承して決まったという経緯です。
一応、会派入りに際しては西田氏が齊藤氏に『(N国の)立花孝志党首のような無茶なSNSの使い方はしてないな?』と確認したとのことでしたが、一部では物議を醸しています」(参院自民党関係者)
自民・公明両党の蜜月は野党時代も含め、実に26年にわたり続いた。果たして、今回の“自維連立”はどれだけ続くのか。その先行きは、いまだ流動的と言えそうだ。
取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班