「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》

全国各地で、クマによる被害のニュースが相次いでいる。環境省は10月30日、今年度クマに襲われて亡くなった人の数が12人に上ったと発表し、すでにこれまで過去最多だった2023年度の6人から2倍の死者数となっている。
クマは市街地に出没することも増えており、10月31日には宮城県仙台市の道路脇や、埼玉県飯能市の住宅地付近でもクマが目撃されている。
「2年前は町中に熊が出没したら大騒ぎになりましたが、もう当たり前になってしまった。あまり驚くこともありませんよ」
こう話すのは2023年、北秋田市内にある自宅の車庫でクマに襲われ重傷を負った湊屋啓二さんだ(68)。被害件数が突出している秋田県で暮らす湊屋さんは、近年のクマの”変化”を感じているという。
「どこで熊に襲われるか、まったく予測不可能な状態になってしまいました。被害に遭う方が増えているなか、自分が熊と遭遇した時の話が少しでも役に立てばと思い、なるべく取材に応じることにしています」(湊屋さん)
湊屋さんが被害に遭ったのは、2年前の10月19日の朝のことだった。この日、駅から徒歩5分ほどの市街地のバス停でバスを待っていた女子高生がクマに咬まれたあと、湊屋さんを含む4人が同じクマに襲われて怪我をした。湊屋さんが襲われたのも商店街から1ブロック離れたところにある自宅の前で、全国ニュースでも大きく報じられていた。
「怪我をした直後は気が動転していたこともあって忘れていたことも多いのですが、改めて当時のことを振り返ると、忘れていたことをだんだんと思い出してきました。
当日の朝、自宅前のバス停で女子高生が熊に襲われニュースになっていたんです。警戒していましたが、まさか自宅の車庫に熊が隠れているとは考えてもいませんでした。シャッターを開けると目の前に熊がいて、一瞬目が合い、にらみ合うような状況になりました。時間にしたら2~3秒だと思いますが、今思い出してもぞっとします。実際に目の前に立たれると大きくて、恐ろしい。自分の無力感を感じました」
数秒のにらみ合いの後、襲われると思い後方に走り出したという湊屋さん。クマに襲い掛かられたのは、その直後だった。
「7~8メートルほど走って逃げたと記憶しています。そうしたらすぐに熊が物凄いスピードで追いかけてきて、自分を追い抜いていきました。そして左斜め前方から襲いかかってきたんです。当時は恐怖で記憶が曖昧なのですが、退院後に自宅の敷地を確認したら、自分が逃げた脇の木や草むらが全部倒れて、クマがどのように移動したのかがわかった。