青森県は、クマなど有害鳥獣の捕獲を担うハンターの確保策を強化している。年3回だった狩猟免許の試験回数を今年度から4回に増やしたほか、新規免許取得者向けに銃取得費用を助成する仕組みも新設。免許の新規取得を後押ししたい考えだ。(平田健人)
「弾を装填(そうてん)してください」「射撃姿勢を取ってください」。指示を受けた男性が静かに銃に弾を込めると、緊張した面持ちでガラス窓に銃口を向けた。9月13日に弘前市中央公民館で開かれた第1種免許試験の一コマで、受験者は模擬銃を使って分解や組み立てなど発砲前後の動作を進めた。
弘前市の男性(74)はカキや栗をクマに食べられる被害を機に受験したといい、「花火などで対策をしてきたが、どうしようもない。空砲でもいいから撃ちたい」と切迫した様子だった。
この日は今年度3回目の免許試験で、従来であれば次回は来年度まで待つ必要があったが今年度は12月に4回目が受けられる。さらに9月からは新規免許取得者に対し、試験前の講習会費用に加え、第1種免許限定で10万円を上限に銃など装備品の購入費用も助成している。いずれも県内での有害鳥獣捕獲への参加が条件だ。
県内では、クマ対策に効果的なライフル銃を扱うのに必要な第1種免許の所持者が2023年度末時点で1123人にとどまり、ピークだった1981年度の6964人から8割超も減った。捕獲した獣類を食料としたり、敷物に加工したりする風習が廃れたことが一因に考えられ、2016年度以降の新規取得者も年平均70人を割り込む。
ライフル銃を新たに持つには、銃刀法で10年以上の猟銃所持歴も求められる。県自然保護課の近藤毅・総括主幹は「狩猟免許所持者をしっかり増やしていかないと、鳥獣被害の高まりに対応していけなくなる」と強調する。
獣害対策、自衛も徹底を
ハンターの確保以外にも課題はある。
兵庫県立大自然・環境科学研究所の山端直人教授(野生動物管理学)は地元住民に対し「できることは自分でやることに尽きる」として、果物を放置してクマなどのエサにしないといった対応や、防護柵設置の徹底を呼びかける。
山端氏によると、地元住民の合意形成を図るには専門人材の登用が有効だが、組織規模が小さい市町村では対応が難しく、都道府県が前面に出る必要がある。兵庫県は野生動物管理のため専門機関「森林動物研究センター」を設け、生態研究や出没後の捕獲対応に当たらせている。島根県では、鳥獣対策専門の県職員を採用しているという。
◆狩猟免許=第1種銃(火薬銃)、第2種銃(空気銃)、わな、網の4区分があり、各都道府県が免許試験を実施する。銃の所持には都道府県公安委員会の許可も必要となる。