秋田県でクマによる人的被害が深刻化している状況を受け、陸上自衛隊の秋田駐屯地(秋田市)で災害派遣なども担っている第21普通科連隊から隊員15人が5日、同県鹿角市に派遣され、クマ対策の支援活動を始めた。隊員らは車両7台に分かれて午前10時すぎから順次、活動拠点となる同市花輪の柴平地域活動センターに入った。初日は、青森駐屯地(青森市)の第9師団からの応援要員も駆け付けた。
鹿角市長「迅速な派遣に感謝」
午後1時半から、同センターで派遣受け入れ式が非公開で行われ、秋田駐屯地の清田裕幸司令も出席した。式後、鹿角市の笹本真司市長は記者団に「(秋田)県知事の派遣要請から1週間という迅速な派遣に感謝を伝えた。自衛隊側からは誠心誠意取り組むという言葉をもらった」と説明した。
さらに笹本市長は「今年度の市内のクマ捕獲数は計290頭、10月だけでも100頭近い。市民は山に入らないと徹底しているが、クマは街中に出て背後から襲ってくるので、イベントの中止だけでなく、外に出ることもできない。市民の安全確保に向け、市としても自衛隊と一緒に取り組む」と語った。
この後、隊員らは既に仕掛けてある箱わなの移動のために出動。鹿角市十和田大湯地区のクリの木近くに仕掛けた箱わなを、猟友会メンバーや市職員らとともに、10キロほど離れたリンゴ園近くに運搬・移設した。
隊員の一部は泊まり込みで活動
クリは既に実がなくなったが、リンゴ園は真っ盛りで赤い実がたわわに実る。設置場所近くの農道にはクマの糞が点々と落ちていた。このリンゴ園を営む女性(75)は「(クマが)道を歩く姿をしょっちゅう見かけ、リンゴをずいぶん食われた。6月にはサクランボも食い荒らされた。自衛隊に助けてもらってありがたい。早く捕まえてほしい」と作業を見守っていた。
隊員15人のうち10人程度は柴平地域活動センターに泊まり込みで活動し、毎日午前7時から暗くなる午後4時まで、箱わなの運搬や設置手伝い、市内の地形状況の調査などを続ける。(八並朋昌)