立花孝志容疑者「発言したことは争わない」…死者に対する名誉毀損容疑での立件は「異例」

兵庫県の内部告発問題に絡み、1月に死亡した竹内英明前県議(当時50歳)に関するデマを発信して名誉を傷つけたとして、県警は9日、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者(58)を名誉毀損(きそん)容疑で逮捕した。死者に対する名誉毀損容疑での立件は異例。県警は立花容疑者の認否を明らかにしていないが、捜査関係者によると、調べに「発言したことは争わない」と供述しているという。
発表では、立花容疑者は竹内氏について、昨年12月13~14日、街頭演説で「警察の取り調べを受けているのは多分間違いない」などと発言。亡くなった後の今年1月19~20日、SNSに「県警から継続的な任意の取り調べを受けていた」「明日逮捕される予定だった」と虚偽の内容を投稿するなどし、竹内氏の名誉を傷つけた疑い。
県警は、逮捕に踏み切った理由について、悪質性が高いことに加え、10月にアラブ首長国連邦・ドバイに渡航していたことから、逃亡や証拠隠滅の恐れもあると判断したとしている。
竹内氏は斎藤元彦知事のパワハラ疑惑など内部告発問題を調査する百条委員会の元委員。昨年10~11月の県知事選の期間中、疑惑を追及する様子がSNSで拡散し、中傷する投稿が相次いだ。投開票日の翌日に「一身上の都合」を理由に辞職し、今年1月18日に亡くなった。自殺とみられる。県警は6月、竹内氏の妻(50)から名誉毀損容疑の告訴を受けて捜査していた。
名誉毀損罪の法定刑は3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金。公然と事実を示して人の名誉を傷つけた場合に成立する。事実の真偽は問われない。だが、死者への名誉毀損は虚偽の事実を示した場合に限られている。示した事実が虚偽だと明確に認識していたことの立証が必要との学説もある。
立花容疑者はユーチューブ動画で「ある方からLINEで情報を得た」「真実相当性(真実と信じる相当の理由)を主張している」などと語っていた。県警は立花容疑者から複数回、任意で事情聴取したほか、情報源に挙げた人物への捜査を重ねた結果、立花容疑者が根拠なく情報を発信した疑いがあると判断した。
法務省の統計によると、死者への名誉毀損罪は昨年までの過去10年間で略式起訴が2件あるだけだった。
立花容疑者は、NHKの受信契約者の個人情報を不正取得したなどとして、不正競争防止法違反などで懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決が2023年に確定した。執行猶予中に新たな事件で拘禁刑以上の刑が確定すれば、執行猶予が取り消されることがある。
立花容疑者は昨年の兵庫県知事選に立候補し、当選を目的とせず、再選された斎藤知事を応援する「2馬力選挙」を展開。最近は、市長が失職した静岡県伊東市長選(12月7日告示、14日投開票)への立候補の意向を表明していた。
兵庫県警は10日、立花容疑者を神戸地検に送検した。