北海道・知床沖の観光船沈没事故から約3年7カ月。12日に釧路地裁で始まった初公判で、弁護側は無罪を主張した。初公判を傍聴した被害者家族は運航会社社長の桂田精一被告(62)に鋭い視線を向け、船からの118番通報の切迫した音声が法廷で再生されると、すすり泣く姿も見られた。家族らは「許せない」と悲痛な面持ちを浮かべる。
長男の小柳宝大(みちお)さん(当時34歳)が行方不明になったままの父親(67)は福岡県久留米市から駆けつけた。こげ茶色のスーツや青い水玉模様のネクタイ、靴、下着。かつて宝大さんが愛用していたものを身につけて初公判に臨んだ。「一緒に被告の言葉を聞いて、戦っていこう」と思いを込めた。
桂田被告は法廷で頭を下げ、被害者や家族に対して謝罪したが、不信感は根強い。父親は「儀礼的なもの」と切り捨てた。今後の公判では、被害者参加制度を利用して被告に質問する意向だ。「必ず罪に問わせる」と語った。
息子(当時7歳)と元妻(同42歳)が行方不明になっている北海道内の男性(53)は怒りを込め、法廷で桂田被告の目を真っすぐに見続けた。「これだけの犠牲者が出ているのに、よく無罪主張できるなと。本当に許せない」
過失を認めない被告側の主張に、何度も「ふざけんな」と叫びたくなった。本来なら、息子は小学5年になっている。男性は「最大限の罰を与えてほしい」と語った。 【和田幸栞】