安倍晋三元首相銃撃事件で起訴された山上徹也被告(45)の裁判員裁判が13日、奈良地裁(田中伸一裁判長)であり、検察側は安倍氏の妻昭恵さんの心情をまとめた書面を読み上げた。昭恵さんは「ただ、生きていてほしかった。長生きしてほしかった」とつづった。
事件から1年後となる2023年8月付の書面によると、昭恵さんは事件当日の朝、いつも通りに夫を送り出した。午前11時半過ぎに「撃たれた」と事務所から連絡を受けたという。「あまりに衝撃的だった。世界中の友人から夫の無事を祈るメッセージが届いた」と振り返った。
夫が搬送された病院に向かうと「やっと会えた」。笑っているような顔をしていた夫。その手を握り、耳元で「晋ちゃん、晋ちゃん」と声を掛けた。
「夫の手はまだ温かく、私のことを待ってくれていた」と感じたという。蘇生措置をする医師に対し、「もう結構です」と告げ、永遠の別れとなった。「全てが夢のようで、涙も出ませんでした」
真面目で優しく、努力家。そして、母思いの夫だった。首相を退任してからは家族で過ごす時間も増え、飼い犬とよく散歩に出かけたという。「もっと、もっと続くと思っていました」
家を出てわずか3時間半後に突然、亡くなった夫。昭恵さんは「気を張ってなんとか1年を過ごしてきた」。一周忌で家族や友人が集まると、「なんで、ここにいないのだろう」と涙があふれたという。
最後に妻としての思いを訴えた。「ただ、生きていてほしかった。長生きしてほしかった」【林みづき】