埼玉県八潮市の県道陥没事故を巡り、下水道管内で発生しているとされる硫化水素について専門家が解説する講演会が23日、同市内で開かれた。近隣住民ら89人が参加し、人体への影響を心配する声が相次いだ。専門家からは「直接的な健康被害はない」との見解が示された。
県は事故後、現場周辺での大気測定を続けている。硫化水素のセンサーが反応することがあっても低濃度(10ppm未満)で、1日を通しては計測されない日が多いとしている。だが、近隣住民からは「臭気などに悩まされている」との声が出ている。住民の不安を和らげようと、県がこの日の講演会を企画した。
解説したのは、埼玉医科大病院の上條吉人・臨床中毒センター長。代謝の過程で人体の内部でも硫化水素は発生しており、人体には解毒機能があると説明した。温泉地での濃度を示し、低濃度の硫化水素で健康被害が起きた報告はないとした。その上で、現場周辺での低濃度では「直接的な健康被害はない。多少の硫化水素が体に入っても、きちんと解毒される」と解説した。
「事故後に頭痛が起こることが増えている」という参加者に対して、上條センター長は、臭気による不快感やストレスで、自律神経が乱れている可能性があると説明した。
破損した下水道管に別の管を敷設する工事は、年内に終わる見通しとなっている。大野知事は21日の定例記者会見で、「完了すると、硫化水素や臭気が一定程度、収まるのではないかと考えている」と語った。