米国発の報道の打ち消しに日本政府が躍起だ。キッカケは、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が26日、トランプ米大統領と高市首相との電話会談(25日実施)について〈トランプ大統領から台湾の主権に関する問題で中国政府を挑発しないよう助言〉と報じたこと。政府は異常なほどWSJ報道に過敏になっている。
報道を受け、木原官房長官は27日午前の会見で、WSJの報道内容が事実かどうかについて「外交上のやりとり」を理由に明言を避けた。ところが、同日午後の会見では一転、「多くの照会が政府になされた」として、「『トランプ大統領から台湾の主権に関する問題で中国政府を挑発しないよう助言』との記述がありますが、そのような事実がない点は明確にしておきます」と報道を全否定。WSJに申し入れをしたと明らかにした。
日米電話会談に関する報道は何も1紙にとどまらない。木原氏が会見した同日には、ロイターが〈トランプ米大統領が高市早苗首相に対し、日中関係悪化のさらなるエスカレーションを望まないとの考えを伝えていたことが分かった〉と報じ、共同通信も〈トランプ氏は対立のエスカレートを避けるよう要請〉〈トランプ氏は日中関係に触れ「マネージ(管理)する必要性」に言及した〉と伝えた。
当然、一連の報道は国会にも飛び火。28日の衆院外務委員会で、立憲民主党の小熊慎司議員がWSJ記事について事実関係を確認すると、尾崎官房副長官は木原氏と同様、改めて「トランプ米大統領から高市首相への助言」を否定。一方、共同通信の報道に関しては「外交上のやりとりであり、お答えは差し控える」と真偽への言及を避けた。
不思議なのは、なぜここまで打ち消しに必死なのかだ。
「センシティブな話題だからこそ政府は火消しに回っていますが、一部報道に関して全否定するほど踏み込むのは珍しい。否定しておかないと、事実として受け取られてしまい、保守が看板の高市政権にとってトランプ氏に『たしなめられた』とあっては支持層からも突き上げをくらいかねない。メンツの問題がある一方、否定しなければ、アメリカに言われた通りに振る舞った方がいいという勢力が湧いてくる可能性もある。こうした事情を踏まえ、先行したWSJ記事を『ウソ』と言ってのけたわけですが、実際はトランプ氏からは当該記事の書きぶりよりも、きつくたしなめられたようです」(官邸事情通)
■落としどころはない
要するに、今以上のハレーションを生みたくない政権のメンツの問題なのだが、肝心の日中対立の雪解けは見えてこない。外交問題に詳しい国会議員は「落としどころはない」と断言し、タメ息交じりに続ける。
「高市首相は答弁を撤回するつもりはないし、撤回したら日本外交の汚点にもなり得る。従来の政府答弁から踏み込んだ発言自体は問題だが、かといって後戻りもできない。言ってしまった以上、政府としては中国に対し『台湾問題に関して従来の立場を踏襲し続けている』と言い続けるより他にない。エスカレーションを避けつつ、中国依存のマーケットやサプライチェーンを見直す奇貨にするしかないのではないか」
曖昧戦略で封じてきたパンドラの箱を開けてしまった以上、責任は高市首相にある。さて、どうしたものか。
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