高市早苗首相は2日、東京電力福島第1原発(福島県大熊、双葉両町)を視察した。この後、記者団に「廃炉や処理水の海洋放出が安全かつ着実に進捗(しんちょく)している」と強調。政府と東電が目指す2051年までの廃炉完了について「安全確保を最優先に、国も前面に立って最後まで責任を持って取り組む」と表明した。
首相の福島訪問は10月の就任後初めて。東日本大震災に伴う同原発事故から来年3月で15年の節目を迎えることを踏まえ、復興を重視する政権の姿勢を示す狙いがある。廃炉作業などについて説明を受け、内堀雅雄知事とも面会した。
首相は、原発事故の除染で発生した「除去土壌」を保管する中間貯蔵施設も視察。政府は45年3月までに除去土壌を福島県外で最終処分する方針を決定しており、首相は「国としての約束であり、責任だ」と明言。全国的な復興再生利用の拡大に意欲を示した。30年以降の除去土壌処理に関する工程表(ロードマップ)を今後、段階的に示す考えも明らかにした。
首相は双葉町の帰還困難区域を訪問。同町の伊沢史朗町長から、樹木が繁茂した荒廃農地にクマやイノシシが出没して安全面での新たな課題になっていることや、農業再開のために不可欠なため池の除染が全く進んでいないことなどについて要請を受けた。 [時事通信社]