2024年7月に山形県戸沢村の蔵岡集落をのみ込んだ記録的大雨で被災し、仮設住宅で暮らす人々に一足早く年越しそばの差し入れがあった。近くで飲食店を営む夫婦が11年3月の東日本大震災で家族を失った自身の経験から被災者に寄り添おうと、大雨被害から2度目の年末も打ち立てのそばを配った。
同村岩清水の山科守さん(65)と妻しげみさん(61)は23日、27世帯55人が暮らす同村名高の仮設住宅を訪ね、住民たちと談笑しながら、生そばと揚げたてのエビの天ぷらを手渡した。
そばを受け取った芦原良子さん(88)は「部屋でゆでて食べた去年のそばも本当においしかった。心が温かくなる」とほほ笑んだ。山科さんらは昨年末もそばを届けたほか、経営する飲食店にも招待するなどして交流を続けている。
同じ最上川の流域に暮らす山科さん夫婦にとって、川の氾濫による被災は人ごとではなかった。宮城県名取市閖上に実家があったしげみさんは、東日本大震災で両親と中学1年(当時)のおいを失った。震災発生の翌日から山形と宮城を行き来し、約1カ月後までの間に3人は見つかった。
あれから14年の月日が過ぎたが、何もできなかったという後悔や無念さ、申し訳なさを抱え続けている。守さんは「そばを差し入れることは二人で相談して決めた。小さな形で寄り添い続けようと思った。勝手にやっていることだ」と話す。しげみさんも「『忘れていないよ』という思いを寄せ続けたい」と思いを明かす。
「元気でいて」との願いを込めながら、そばのように細く長く、被災者に寄り添い続ける。【長南里香】