山梨・扇山の延焼続く、住民「涙ながらに家を出た」「避難所は想像以上に寒い」…不安と疲れと祈る気持ち

山梨県大月市と上野原市にまたがる扇山で8日に確認された山火事は、9日も鎮火には至らなかった。下草など16ヘクタールを焼き、依然として延焼を続けている。自らが住む家の目前にまで迫る炎に、住民らは不安と疲れを抱えながら、祈るような気持ちで消火活動を見守った。(加藤慧、前田智貴)
8日午前に通報があった際には、山の中腹付近で白煙が確認されていたが、火は山頂方向に燃え広がった後、麓にも延焼している。
この日は朝から防災ヘリなどが上空からの放水を行い、昼前には派遣要請を受けた自衛隊のヘリも加わったが、火の勢いを止めることはできず、夕方には再び、消火活動は中断された。消防などは10日朝から活動を再開することにしている。
現時点で出火原因は不明というが、出火したとみられる場所付近は、普段は火の気がないといい、消防や県警は、火の不始末や人為的に付けた火が周囲に燃え広がった可能性もあるとみて、出火原因を調べている。
一方、避難指示が出された大目地区の一部住民らは、避難所でほとんど寝られないような夜を過ごした。
このうち、避難所となっていた上野原市役所大目出張所では9日朝、一夜を明かした避難者が続々と施設を後にし、薬の服用などのために一時帰路についた。
夫と2人で避難したという同地区のパート従業員女性(73)は「すぐに消えると思っていたが、まだまだ燃え広がっているようだ。一刻も早く家に帰りたい」と疲れ切った様子で話した。
また、夫の位牌(いはい)を持って避難所で一夜を過ごしたという同地区の女性(72)も「このようなことは人生で初めて。涙ながらに家を出た」と話した。結局、9日に指示は解除されず、「避難所は想像以上に寒く、一睡もできなかった。今晩は自宅で過ごそうと思う」と肩を落とした。
上野原市によると、9日も市内に2か所の避難所が設けられ、同日午後7時半現在で、3世帯9人が避難しているという。
現場では消防団員が集落への延焼を食い止めようと、火の範囲を確認するなどの対応に追われていた。
同市大野の男性(49)は交代で30分ごとに延焼の有無などを見回っているとし、「家に火が及ばないよう、いつでも消火できるように準備を進めている。風向きの変化で民家にも火がくるのではないかと心配だ」と懸念した。
同市川合の男性(62)は、8日の火災の通報があった直後に消火活動に参加したという。
約15リットルの水を背負い入山。30分ほど山を登ると、山肌が燃えさかるのを目の当たりにしたといい、「一面が火の海で、放水を開始したが、すぐに消防本部から下山の指示があった」と振り返る。
9日は集落近くで待機したが、「夜の間に燃え広がるのではないかと考えると不安になる」とうつむいた。