酒気帯びトラックに衝突され家族3人失った遺族、公判で「心からの謝罪聞きたい」…事故後生まれた赤ちゃんは「ママ」より先に「パパ」口に

14日に前橋地裁で初公判
群馬県伊勢崎市の国道17号で2024年5月、トラックに衝突された乗用車の家族3人が死亡した事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)に問われた吉岡町下野田、元トラック運転手鈴木吾郎被告(71)の裁判員裁判が14日、前橋地裁で始まる。遺族が読売新聞の取材に応じ、「(3人の命を)奪った自覚があるのか。心からの謝罪を聞きたい」と語った。(星野佑太、桜木優樹)
5月6日の事故では、前橋市樋越町、会社員塚越寛人さん(当時26歳)と長男湊斗ちゃん(同2歳)、寛人さんの父で渋川市赤城町宮田、会社員の正宏さん(同53歳)が亡くなった。起訴状によると、鈴木被告は酒気を帯びて正常な運転が困難な状態でトラックを運転し、対向車線の乗用車2台に衝突して3人を死亡させたなどとされる。
事故当時、寛人さんの妻は2人目の子供を妊娠中で、その2か月後に出産した。1人での育児は大変で、なかなか機嫌が直らない赤ちゃんに声を荒らげることもある。そんなとき、湊斗ちゃんをあやすのが上手だった夫のことを思い出す。
赤ちゃんは1歳5か月になり、泣き顔やくせ毛は長男に似てきた。歩いて言葉も発するようになった。「パパ、みなくんおはよう」と毎朝2人の写真に語りかけているためか、赤ちゃんは昨年10月頃から、あらゆる物を指さして「パパ」と口にするようになった。「ママ」より2か月も早かった。
最初は「パパはいないんだよ」と悲しい気持ちになったが、何度も聞くうちに「いろんなところにパパいるね、と前向きにとらえられるようになった」。
赤ちゃんは湊斗ちゃんの写真や動画を見せると泣きやむといい、「湊斗にも助けてもらっています」と話して赤ちゃんを見つめた。
「湊斗がつけた汚れが消えるのがいやだから」と、赤ちゃんにはお下がりは着せていない。
鈴木被告から謝罪はないという。裁判は全て傍聴し、意見陳述にも臨むつもりだ。「3人がどんな人だったのか、また、事故で私たちの生活がどう変わったかを伝えたい」。静かに、力強く言葉に出した。
公判では、前橋地検が補充捜査を経て、過失運転致死傷から訴因変更した危険運転致死傷が成立するかどうかが争点となる見通しだ。一方で地検は昨年10月、危険運転が認められない場合に備えて、鈴木被告を道路交通法違反(酒気帯び運転)で追起訴した。
前橋地裁が発表した公判前整理手続きの結果によると、危険運転致死傷では鈴木被告がアルコールの影響で状況に応じた運転を行うのが困難な心身状態だったかどうか、道交法違反では事故当時の血中アルコール濃度が酒気帯び運転の基準以上だったかどうかが争われるという。