高い致死率「ニパウイルス」アジア各国で流行の懸念 ワクチン・特効薬なし…日本への流入リスクは?【Nスタ解説】

インドで、致死率が高いとされる「ニパウイルス」のヒトへの感染が確認され、アジア各国で流行への懸念が高まっています。 日本ではあまり馴染みのない「ニパウイルス」とは、一体どんな感染症なのでしょうか。
発症時の致死率は40~75%?「ニパウイルス」
山形純菜キャスター: 【ニパウイルス】 ▼発症時の致死率は40~75%(※医療体制などで変動) ▼日本国内では患者の報告なし ▼東南アジアや南アジアでは何度か流行したウイルス ▼発症後に感染力を持つ
●1998年から1999年 マレーシアで初めて発生確認 ●2001年以降 バングラデシュやインドでほぼ毎年患者が報告 ●2025年12月以降 インド東部で2人感染(1人回復・1人重篤) →インド保健省は、接触者196人を検査し「全員が陰性」と発表
致死率が高いように思いますが、「ニパウイルス」についてどう見ていますか。
埼玉医科大学総合医療センター岡秀昭さん: 症状はないがウイルスを持っているという「不顕性感染」のケースも、それなりにあるようなので注意が必要です。
致死率が40~75%というのは、おそらく脳炎の症状を起こした患者の致死率ではないかと思いますので、もちろん適度に恐れる必要はありますが、数字を額面通り受け取る必要はないのではないかと思います。
日本で感染拡大する可能性は?
山形キャスター: これまで「ニパウイルス」が日本で確認されていない理由は何なのでしょうか。
埼玉医科大学総合医療センター岡秀昭さん: 基本的には、熱帯に生息して特にフルーツなどを主食にする「コウモリ」を媒介するウイルスなので、現状、日本ではニパウイルスは確認されていないということです。
井上貴博キャスター: 感染者がウイルスを保有していても、2週間程度は検査しても反応しないということですね。水際対策に工夫が必要になるのでしょうか。
埼玉医科大学総合医療センター岡秀昭さん: 日本国内に持ち帰ってから、ニパウイルスを発症するケースは十分想定されます。
ただ、ニパウイルスの主な感染経路が「ヒトからヒト」ではなく、主には食物や家畜類を介した感染なので、おそらくそれほど広がらないと思います。
「コウモリ」が感染経路 「ニパウイルス」の症状
山形キャスター: 国立健康危機管理研究機構によると、▼ニパウイルスを元々持っているコウモリが媒介して感染した「動物」や、コウモリが食べて汚染した「食べ物」などを通じてヒトが感染するということです。
血液や体液との接触などの「濃厚接触」でヒトからヒトへ感染する場合もあるといいます。
▼4~14日ほどの潜伏期間で、▼発症すると、発熱・頭痛、嘔吐、筋肉痛などの症状が出るということです。その後、意識障害などを起こし、重症化すると「急性脳炎」に至る場合もあるということです。
ヒトからヒトへの感染力は、どのくらい強いのですか。
埼玉医科大学総合医療センター岡秀昭さん: 「濃厚接触」というように、相当、身体・体液を触れあう接触でない限り、うつらないのではないかと思われています。
おそらく初期段階の症状では、インフルエンザやコロナウイルス、マラリア、デング熱などとの区別は困難だと思います。
お笑い芸人令和ロマン松井ケムリさん: 流行するうちに、いわゆる変異のようなものが起こる可能性はありますか。
埼玉医科大学総合医療センター岡秀昭さん: RNAのウイルスなので変異は起こりうると思います。
コロナウイルスのように、ヒトからヒトに感染してウイルスが増殖していくことで、ウイルスは変異していくのですが、現状「ニパウイルス」はどんどんヒトからヒトへうつっていく可能性は高くないので、その部分(変異)もそれほど恐れる必要はないと思います。
対策は?流行地では「生のフルーツ」や「家畜」に注意
山形キャスター: 「ニパウイルス」への対策、何ができるのでしょうか。
【「ニパウイルス」の対策は?】※岡秀昭医師によると ●「ワクチン」「特効薬」はない ●対症療法のみ
タイ・バンコクの空港では体温検査などを実施し、検疫を強化しているといいます。
流行地に渡航する際の注意点としては、以下があげられます。
▼コウモリが食べた可能性のある「生の果物(ヤシの実など)」を食べない ▼コウモリや家畜などを触らない ▼手洗い・マスクの徹底
埼玉医科大学総合医療センター岡秀昭さん: あくまで流行地に限りますが、おそらく果物はニパウイルスに汚染されているでしょう。
皮で覆われている果物の場合は、皮をしっかり手で剥いて、きれいな水で洗うというのが重要です。
一方で、ヤシの実は中のジュースが汚染されている可能性があるので、避けた方がいいかもしれません。
出水麻衣キャスター: 観光地ではヤシの実のジュースなど、よく見かけますよね。
データが少ない「ニパウイルス」治療薬やワクチンの現状は
出水キャスター: 脳炎の症状を伴うと、致死率が高いということですが、ニパウイルスの感染から脳炎に発展する割合などは分かっているのですか。
埼玉医科大学総合医療センター岡秀昭さん: 正確なデータは分かっていません。また、「不顕性感染」があることは分かっていますが、割合は分かっていません。
「脳炎」の症状としては、基本的に頭痛が強くなり、さまざまな脳の症状が出てきます。
例えば、震え(いわゆる痙攣)や自分の意思に関係なく変な動きをしてしまう「不随意運動」、そして、おかしな言動、徘徊といった症状があるときには脳炎が疑われます。
井上キャスター: 今はない「治療薬」や「ワクチン」についても、複数の研究グループが作っているということですね。
埼玉医科大学総合医療センター岡秀昭さん: コロナ禍でもmRNAワクチンは割とすぐに開発されましたので、本腰を入れればそれほど難しいことではないのかもしれません。ただ、デング熱などでは開発に苦戦しているので、実際にやってみないとわからないと思います。
治療薬としては「アビガン」があります。また、ほかの一部のウイルス薬が“効く可能性”が示されていますが、本当に効くかどうかはまだデータがありません。
========== <プロフィール> 岡秀昭さん 埼玉医科大学総合医療センター診療部長 日本感染症学会感染症専門医
令和ロマン松井ケムリさん お笑い芸人1993年生まれ慶應義塾大学法学部卒業 M-1グランプリ2023・2024史上初の連覇達成