2024年5月に群馬県伊勢崎市で起きた3人死亡事故で自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)に問われた吉岡町下野田、元運転手鈴木吾郎被告(71)の裁判員裁判は30日、論告求刑が行われ、検察側は結果の重大性を強調し、法定刑上限の懲役20年を求刑した。意見陳述に臨んだ遺族4人は悲痛な思いを語り、被告への厳罰を求めた。
事故では前橋市樋越町、会社員塚越寛人さん(当時26歳)と長男湊斗(みなと)ちゃん(同2歳)、寛人さんの父で渋川市赤城町宮田、会社員正宏さん(同53歳)が亡くなるなどした。
前橋地裁(高橋正幸裁判長)で行われた意見陳述で寛人さんの妻は「湊斗は2歳7か月のまま成長せず、成長の喜びを感じることもできない。被告人がこの世に存在していることが憎い」と語った。
事故後、遺族の生活は一変した。妻は「毎日が生き地獄」と明かし、寛人さんの母親は「車を運転することがつらくなり、家から出る機会が減った」。
被告について寛人さんの祖母は「謝罪の気持ちが全く伝わってこない」と話し、寛人さんの兄は「最も重い刑罰を」と求めた。
意見陳述は計約1時間に及んだ。遺族は時に声を詰まらせながら言葉を紡ぎ、傍聴席や裁判員席からもすすり泣きが漏れた。被告は終始うつむいていた。
その後の論告で、検察官は「亡くなった人の無念さは計り知れず、遺族の苦痛も甚大だ」などと何度も語気を強めた。「欲望のまま焼酎を飲んでハンドルを握り、酌量の余地はない」と非難した。
飲酒運転を否定する弁護側は、被告が捜査段階で「焼酎を2本飲んだ」旨を供述したとされていることに、「被告は供述調書の内容を理解しないまま署名した」と説明。事故時の血中アルコール濃度は酒気帯び運転の基準の5倍以上だったとの検察側の主張には、仮に飲酒が認められても「あくまで推定値。どの程度アルコールの影響を受けたのか誰も断定できない」と反論した。
初公判以降、遺族から目を背け続けていた鈴木被告は最終意見陳述で「刑務所に入って反省したい。遺族に深くおわびする」と手書きのメモを読み上げると、遺族を向いて頭を下げ、土下座もした。遺族は閉廷後の記者会見で「形だけの謝罪だ」「その時だけそうされても信じられない」と冷ややかに語った。