切り札となる「3分の2」超の議席を確保した自民、当面は「再可決」に慎重か…強行なら「世論の批判招く」

自民党は8日投開票の衆院選で、総定数の「3分の2」以上の議席を単独で確保し、参院で否決された法案を衆院で再可決できるようになった。国会運営上の切り札を得たことになるが、野党の反発を招きかねないため、当面は再可決に頼らずに野党の協力を得ることを優先する構えだ。
自民の鈴木幹事長は9日未明、党本部で記者団に「数をたのんで無理に物事を通す姿勢は慎まなければならない」と述べた。高市首相(自民党総裁)も同日の記者会見で「国民民主党に(連立参加の)意向があるなら、ぜひ追求したい」と語った。まずは連立の枠組み拡大などを通じ、参院で少数与党となっている状態を解消することが先決だとの考えを示したものだ。
自民は今回、316議席を得て、単独で3分の2(310)を超えた。憲法59条は、参院で否決された法案や、60日以内に議決されずに「みなし否決」された法案について、衆院で3分の2以上の賛成があれば再可決できると定めている。
これまで再可決は、衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」で実施された例が多い。福田内閣だった2008年、インド洋での海上自衛隊の給油活動再開のための新テロ対策特別措置法が参院で否決されたことを受け、衆院で再可決されたことがある。その後の麻生内閣、第2次安倍内閣を含め、3内閣で計18件に上る。
ただ、野党の反発も強まるため、歴代内閣は抑制的な姿勢も示してきた。15年に安全保障関連法の参院審議が野党の反対で長引いた際は、当時の安倍首相の下で再可決が検討されたものの最終的には見送られた。自民ベテランは「何でもかんでも再可決しようとすれば世論の批判も招く」と指摘する。日本銀行総裁などの国会同意人事は対象外で、再可決には限界もある。
一方、野党側は、歴史的大勝を果たした高市首相が今後、自身の思い入れのある法案などで再可決に踏み切ってくるのではないかと警戒している。
首相が、日本維新の会との連立合意に盛り込んだスパイ防止法案や外国人土地取得規制強化法案、国旗損壊罪の法制化などを「やりたくてやれなかった政策」と述べ、成立への意欲を強調しているためだ。
いずれも中道改革連合などが反対姿勢を示している政策のため、今後の国会では与野党対決の火種になる可能性がある。