在留外国人が最多更新の中、日本語学校の整備に遅れ…文科省認定校は全国で64校のみ

日本に住む外国人が過去最多を更新する中、日本語の学習環境の整備が課題になっている。国は日本語学校の審査を厳格化して質の向上を図るが、学校や教室自体がない自治体も多く、受け皿は広がっていない。専門家は「国と自治体が一体となって学習機会の増加を目指すべきだ」としている。(宇田和幸)
在留外国人最多395万人
「東大寺は奈良で有名なお寺です。かわいいシカを見てみたいです」。今月18日午前、名古屋市内にある日本語学校「ニューワールド国際学院」の教室では、18人の外国人留学生が、校外学習で訪れる予定の奈良市の魅力を日本語でスピーチした。
ネパール出身の19歳は2024年秋に来日した。当初はあいさつが分かる程度の日本語能力だったが、今ではアルバイトの採用面接もなんなくこなす。3月に卒業予定で、「短大に進学し、日本で介護の仕事に就きたい」と夢を語った。
同校は文部科学省から「日本語教育機関」に認定されており、生徒たちは「留学」の在留資格が得られる。バングラデシュやスリランカなど9か国・地域の計83人が、日本の大学や専門学校への進学を目指して学んでいる。地域住民との交流イベントや防災教育にも力を入れ、同校の三木忠晴学院長(58)は「進学だけでなく、地域に必要とされる人材を育てたい」と話す。
教育課程の編成「ノウハウない」
外国人が学ぶ日本語学校はこれまで、在留資格の審査を行う法務省が認可していた。法務省の所管する日本語学校(告示校)は24年末現在、全国に873校と10年前の約2倍に急増したが、在籍管理や日本語指導が不十分な学校も目立っている。
国は24年度に日本語教育機関認定法を施行し、所管が文科省に移行。進学や就職、生活など目的に応じた教育課程の編成や、国家資格の「登録日本語教員」による指導などの条件を義務づけた。
告示校は29年3月までに文科省の認定を受けなければ留学生を受け入れられなくなるが、認定校は現在全国で64校にとどまる。
北陸の語学学校運営会社は、認定校の新設を目指して文科省に2度申請したが、いずれも不認定だった。担当者は「告示校の運営はしているが、『教育課程の編成』と言われてもノウハウがない」と嘆く。
一方で、約1700人の外国人らが学ぶ千駄ヶ谷日本語学校(東京)では、教員8人がかりで1年近くかけて教育課程を練り、24年10月に認定された。新山忠和副校長(61)は「日本語学校は定員100人程度の小規模校も多い。教育課程の作成など認定に必要な人材や時間は限られる」と話す。
武蔵野大学の神吉宇一教授(日本語教育)は「日本語学校は、進学目的の『予備校』としての側面が強かった。新しい制度はコミュニケーションを重視しており、対応できていない学校がある。教育の質と学習機会のバランスが求められる」と分析している。
自治体38%「学習拠点なし」
日本語を学ぶ外国人の受け皿の確保や日本語教師の育成は急務だ。
日本で暮らす在留外国人は2025年6月末で過去最多の395万人を記録した。日本語学校などで学ぶ日本語学習者は24年度で29万人と、通信制高校の在籍者数に匹敵する。一方で、日常会話や生活ルールなどを学ぶ日本語の学習拠点がない「空白地域」は、全国の自治体の38・2%を占め、在留外国人は約17万人が住む。
学習拠点の偏在などで日本語教師の雇用環境も整っていない。文部科学省の調査では、24年度に活動した日本語教師約5万人のうち2万7000人がボランティアだった。
教育支援会社「エルロン」(東京)の石川陽子社長(44)は「職業として安定していなければ日本語教師の担い手は増えにくい。教師の処遇改善を日本語教育の質改善とセットで考える必要がある」と話す。
明治大学の山脇啓造教授(多文化共生論)は「大人の外国人に対する日本語教育は生活や子育て、地域社会に参加する力を育むという社会包摂の視点が重要だ。国や自治体、就労先の企業が連携する仕組みを整えることが求められる」と指摘している。