福島県警は新年度、県内のスーパーなどの店舗内で特定の音声を流し、万引き防止につなげる取り組みを始める。昨年に県内のスーパーで実証実験を行って一定の効果があるとされたメッセージで、「ナッジ」と呼ばれる心理的な効果を狙ったものだ。
ナッジとは行動経済学の用語で、メッセージの伝え方を工夫することで、好ましい選択を後押しする方策だ。
県警の犯罪防止アドバイザーも務める福島大の鈴木あい特任准教授(犯罪科学)が、万引き防止に効果がありそうなメッセージを6種類作成。県警と協力し、昨年8~11月に県内のスーパー「いちい」など16店舗で、それぞれ1種類の音声を音声販売促進機器「呼び込み君」を使って流した。そして、店内にあるはずのものがなくなっている商品の割合「ロス率」が、前年同月と比べて変化があったかを品目ごとに調べた。
最も安定した効果があるとみられたのが「万引きはお店の経営に大きな影響を及ぼします。場合によっては、商品の値上げや品ぞろえの縮小にもつながりますので、万引きはやめましょう」というメッセージ。袋チョコやカミソリなど幅広い品目に効果が見られた。鈴木特任准教授は「道徳的規範、倫理観に響いた」と分析する。
一方、「万引きは犯罪です」や「警備員が巡回しています」といった、万引きの存在を強調するメッセージでは、逆に万引きを誘発させる可能性があることも分かった。
効果の高いメッセージでも特定の品目では逆の効果が出たほか、カップ麺やポケットサイズのお菓子類ではどのメッセージも効果が確認できなかった。鈴木特任准教授は「今後は違う店舗や地域での検証、犯人像の理解を進める必要性もある」と話している。
県警は新年度、「経営に影響する」とするメッセージなど効果が見られた2種類のメッセージを収録したCD―Rを用意。各警察署を通じて地域のスーパーなどに配布し、実際に店舗で活用してもらう考えだ。【松本光樹】