老朽化した橋、修繕も撤去もしない「使い切り」選択肢に…「橋梁トリアージ」で維持費削減も

[ニッポンクライシス]第1部「インフラ」<5>(最終回)
四国山地の中央に位置する高知県大豊町。80超の集落をつなぐ道路には、310の町管理の橋が架かる。大半は設置時期が不明で、判明している86本の4割近くが耐用年数の目安とされる「築50年」を超える。
橋の点検は、町が国や県の要領に基づき5年に1回の頻度で行っている。劣化度を4段階で判定し、緊急措置段階の「4」や5年以内の修繕が必要な「3」の橋は、1本当たり数千万~1億円程度かけて修繕または撤去してきた。
だが、「税収は減少の一途で、もはや全てを直し続ける余裕はない」と下村賢彦(やすひこ)町長(57)は話す。昨年3月末時点で劣化度4は1本、3は43本ある。一方、町の高齢化率は60%台に達し、人口は25年前の半分以下の約2800人に減少した。25年後には1000人を切るとみられる。
町は今年度、橋の老朽化対策を見直し、修繕も撤去もしない「使い切り=終活」を選択肢に加えた。「限られた予算を必要性の高いインフラに集中する」(下村町長)ためだ。劣化度4、3のうち利用頻度の低い橋を、地域住民と協議の上で「使い切り」とし、劣化具合に応じて通行車両を制限するなどして、最終的に通行止めにする。
今年度は、橋桁が一部腐食した築57年の川口橋など3本を「終活」の対象とした。下村町長は「町を持続させるには、使い切る『終活』が不可欠だ」と力を込める。
約73万本ある日本の道路橋のうち、「築50年」以上は2040年に75%に達する。トンネルは52%、上水道は41%、下水道は34%が同様に耐用年数の目安を超える。人口減、高齢化が加速する中、老朽化していくインフラをどう維持・再編し、街の未来図を描いていくかは、全国の自治体共通の課題となる。
政府は今年1月、インフラ対策の指針となる社会資本整備重点計画を改定した。重点目標に「老朽化対策と街づくりの一体化」を盛り込み、インフラの「長寿命化計画」と、都市機能を集約するコンパクトシティーの設計図となる「立地適正化計画」との連動を求める。
モデルとなるのが、コンパクトシティー先進地の富山市だ。市は16年から、約2300ある市管理の橋を劣化状況や重要度から順位付けし、必要性が高い橋に対策を集中する「橋梁(きょうりょう)トリアージ」を実施。50年間で総額730億円の維持費削減を見込む。
トリアージは住民との合意が前提となる。市の点検で劣化度4と判定された橋の撤去を巡っては、「迂回(うかい)路まで遠く、不便になる」と近隣住民らが反対。理解を得られるまで約10年を要した。高木勝人・市道路構造保全対策課長(53)は「市の独断で撤去しても住民の不信感が残るだけだ。窮迫する財政事情を含め、丁寧に説明していくことが求められる」と話す。
高知県大豊町と橋の老朽化対策を進める岩城一郎・日大教授(62)(社会基盤メンテナンス工学)は「『壊れる前に直す』という予防保全の考えを一律に適用する時代は終わった」と強調。「自治体は住民と共に10年後、20年後に残すインフラを考え、効率的な管理を実現することが求められる」と訴える。