皇族の減少で皇統の存続が不安視されて久しい。そうしたなかで広がるのが「愛子天皇待望論」だが、男系男子による継承を求める岩盤保守層の支持を受けてきたとされる高市早苗・首相のもとでは、実現の可能性は低いと見られてきた。だが、この先には高市首相が「愛子天皇」誕生に動くかどうか、決断を迫られる局面が訪れることになりそうだ。一体、どういうことなのか――。【前後編の前編】
高市首相の支持層に変化も
総選挙に圧勝して第2次内閣をスタートさせた高市首相は、2月18日夜の新内閣発足会見で「皇室典範の改正はまさに国家の基本に関わる先送りできない課題と認識している」と力を込めた。
現在、皇位継承権を持つのは皇嗣の秋篠宮文仁親王(60)、悠仁親王(19)、上皇の弟の常陸宮正仁親王(90)の3人のみ。新聞各紙の世論調査では「女性天皇」への賛成や容認が69%(読売)~90%(共同通信)に達し、国民の間では「愛子天皇」への期待が高まるが、皇室典範は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」(第一条)と定めており、女性・女系天皇は認められていない。
高市首相はもともと男系男子継承を支持する岩盤保守層に支えられており、衆議院議長に麻生派の森英介氏が選出されたのも、男系男子による皇統維持を意識した人事とみられている。そのため、天皇皇后の長女である愛子内親王(24)への皇位継承の実現には否定的な立場とされてきた。
しかし、今回の総選挙で高市自民党は従来の岩盤保守層にとどまらず、より幅広い層の支持を集めた。その新たな支持層には、安定的な皇位継承のためには男系男子継承にこだわらず、世論調査で賛意を集める「愛子天皇」の実現を期待する人々も含まれる。こうした支持層の変化を踏まえ、これから皇室典範改正に取り組む高市首相が女性天皇容認論を正面から議論する可能性が出てきたというのだ。
実は、高市首相が政治の師と仰ぐ故・安倍晋三・元首相も、愛子天皇の可能性を探ろうとしていたとの証言がある。
安倍番記者として数々のスクープを報じた元NHK記者のジャーナリスト・岩田明子氏が明かす。
「誤解がないように言うと、安倍さんは男系男子による皇位継承を理想としていた。そして悠仁さままでの現在の皇位継承順位は変えないというのが大前提でした。それを踏まえたうえで、『安倍内閣の体力があるうちに、有識者会議を立ち上げる。そして将来、愛子天皇誕生への道筋に向けても責任ある議論を進めなければならない』と口にし、メモを作成していた。総理退任後は、養子案の動向を見守っていたが、その後、凶弾に倒れてしまった」
そうしたなか、保守派の一部で浮上しているのが愛子内親王から悠仁親王へと皇位をつなぐ「リレー論」だ。
元日本テレビアナウンサーで皇室ジャーナリストの久能靖氏が語る。
「一つの考え方として、次世代は愛子さま、さらにその次を悠仁さまにするという皇位継承順位の特例を設ける。保守派の多くは父系に天皇の血を引かない『女系天皇』に反対している。その点、愛子さまが即位すれば天皇の父を持つ『男系の女性天皇』になる。
日本の歴史上、男系の女性天皇は10代8人いました。愛子さまの次が男系男子の悠仁さまになるのであれば、保守派の反対が強い女系天皇にはつながらない。重要なのは天皇制、皇室の存続の危機だと認識すること。女性天皇について、国民的な議論をする必要がある」
(後編に続く)
※週刊ポスト2026年3月13日号