外国人の不法就労者数が3年連続全国最多となっている茨城県が新年度、独自の「通報報奨金制度」を導入することが決まった。外国人を不法に雇う事業者に関する通報に対し、報奨金を支払い、不法就労対策を強化する狙いだが、「差別・分断を助長する」と反発の声も相次いでいる。
新制度では、外国人を不法に雇う事業者について、県が一般市民から通報を受け、摘発につながるなど有益な情報に対して1万円を支払う。有益な情報は、県が県警に伝える。従来も、県と県警の連携はあったが、制度導入で実効性を高める狙いだという。
出入国管理・難民認定法にも、通報報償金の規定があるが、対象は不法滞在などをする外国人個人で、通報先は出入国在留管理庁だ。県の新制度は、不法就労の温床となっている悪質業者を通報対象としているのが特徴で、警察の取り締まり強化につなげる狙いだという。
一方、誹謗(ひぼう)中傷を防ぐため、通報者には氏名、住所、連絡先などの明示を求める。
2月中旬、導入方針が明らかにされると、反発の声が相次いだ。外国人の就労支援などに取り組む茨城NPOセンター・コモンズは「外国籍住民への偏見を深刻化させかねない」との意見書を出して撤回を求めた。意見書では「不適切な雇用形態に頼らざるを得ない地域産業が抱える構造的な課題がある」とし、労働問題を解決する相談窓口の拡充などを優先すべきだと指摘した。
3月には、県弁護士会が制度反対の会長声明を発表。就労という外形的事実だけで不法就労か、見た目だけで外国人かは判断できないとし、新制度が「外国につながる人が就労しているだけで、疑いの目を持たせることになり、不当な偏見と差別と分断を生じさせる」と糾弾した。
13日の県議会防災環境産業委員会では、新制度に関する意見が400件ほど寄せられ、「人権侵害や排他主義につながる」という声が多かったことが明らかにされた。
こうした反発を受けて県も3月、ホームページに「通報報奨金制度について」とする文章を掲載。
不法就労の外国人摘発者数が、ピーク時と比べ直近5年間で、全国では4割減少する中、県内は45%増加した現状に触れ、「不法就労を放置していては、真面目に働いている外国人に対する不当な差別や排斥につながってしまう」と説明した。排外主義の助長や国籍・人種などを理由とした外国人差別につながるといった批判については「まったく当たらない」と反論した。
人口減が深刻化する中、外国人との共生は各地で重要なテーマとなっている。新制度は、県議会第1回定例会で関連予算案が可決され、新年度に創設される予定で、県には丁寧な説明と、十分な周知が求められそうだ。
外国人を雇用する県内IT企業の人事担当者は「法にのっとって働く外国人や雇用する企業が、迷惑を被らないためのフォロー対策も整えてほしい」と求めた。