〈治安の良さの象徴だけど…〉根絶できない「自販機荒らし」…飲料メーカーや業界団体が「キャッシュレス拡大」「筐体強化」など対応するも残る課題

4月中旬、現金投入口が無残に破壊された自動販売機の写真を載せたXの投稿に対して、「ショック」「自販機は全て電子マネーにすればいい」などの声があがった。このように自動販売機を壊し、中の現金を盗む「自動販売機荒らし」の発生件数はピーク時から大きく減少しているものの、いまなお各地で被害はなくなっていない。飲料メーカーなどへの取材を通してその知られざる実態に迫る。
【画像】「ピーク時は年間22万件」一目でわかる過去30年間の自動販売機ねらいの犯罪数
10年で大きく減少する自動販売機犯罪…進むキャッシュレス対応
警察庁「令和6年の刑法犯に関する統計資料」によれば、非侵入窃盗の認知件数のうち、「自動販売機ねらい」のものは2024年で2513件。ピーク時(1999年)の22万件、10年前(2015年)の1万3000件と比較しても認知件数はこの10年で大きく減少傾向にある。
しかし、被害は完全になくなったわけではない。各都道府県の警察は犯罪発生情報のオープンデータ化を進めているが、各地で自動販売機ねらいの犯罪は発生しており、多くのケースで現金被害が確認されている実態がある。
実際に荒らし被害が発生した場合、飲料メーカーにはどのような負担が生じるのか。あるメーカーの担当者は次のように話す。
「被害内容や設置場所によって異なりますが、商品の損失に加え、補充や修理対応、一時的な営業停止など、運営全体に影響が及ぶことがあります」
続けて、被害の推移について次のように説明する。
「近年、キャッシュレス決済対応の進展もあり、自動販売機のこじ開けについては年々減少している傾向が見られます。ロードサイドや不特定多数の方が購入できる、いわゆる外に設置されている自動販売機が相対的に減少してきていることもあります」
いっぽうで被害が完全にはなくならない要因については「外部からは現金が入っているというイメージを持たれやすい点があるのではないか」としつつ、実際にはキャッシュレス決済対応の拡大や運用の見直しにより、管理の在り方は変化しているという。
「修復が完了するまで販売停止となりますので売上に影響が出ます」
自動販売機ねらいの犯罪が減少している背景には、自動販売機の設置台数自体の減少もあるとみられる。自販機や金融機器(ATMなど)の現金取扱機器の総合的な発展・普及促進を図る業界団体である「日本自動販売システム機械工業会」(JVMA)のデータによれば、2025年12月時点における自動販売機および自動サービス機の国内普及台数はおよそ388万台。2014年の503万台から大きく落ち込んでいる。
こうした状況が防犯対策に与える影響について、前出の飲料メーカー担当者はこういった認識を示す。
「自動販売機事業は、商品の補充や日常的なメンテナンスなど、引き続き『人』の関与が不可欠な事業であることから、人手不足や燃料費をはじめとする各種コスト上昇といった事業環境の変化への対応は、重要な課題だと認識しています。
こうした環境変化を踏まえ、収益性や運営効率の観点から、自動販売機の設置先を適宜見直し、高収益が見込めるロケーションへの再配置や新規設置をあわせて進めています。
また、防犯対策については、最終的に商品を購入されるお客様に安心・安全にご利用いただくべく、設置環境や状況に応じて、必要かつ適切な対策を講じています」
また、アサヒグループホールディングスの担当者も「当社自販機での盗難は減少しています」としたうえで、考えられる要因として「キャッシュレスの伸長や防犯カメラ設置の拡大」を挙げ、「防犯カメラが薄い地域はリスクがあるかと思います」と話す。
窃盗被害が発生すると、修理費や営業停止による損失など、負担は多岐にわたる。
「自販機損傷による修理や、修理が出来ない場合は自販機の入替など、不要な費用が発生します。修復が完了するまで販売停止となりますので売上に影響が出ます。
限られた人員で活動をする中、盗難が発生すると被害届の提出などが必要となり、貴重な営業活動時間にロスが生じます」
こうした状況を受け、同社では一部の自治体や団体と警察が連携した防犯カメラ付きの「みまもる自販機」を展開。周辺地域の安全・安心への貢献につなげていくという。
「犯罪手口の変化などを勘案し、より堅固な自販機が製造されています」
自動販売機の防犯対策を講じているのは飲料メーカーにとどまらない。
前出の日本自動販売システム機械工業会の担当者は、防犯対策の現状についてこう話す。
「当会では、自販機堅牢化基準を制定しており、屋外設置の飲料とタバコ自販機を適用対象として、容易に入手できる工具による扉のこじ開けや錠前破壊を防止するため、自販機本体の強化すべき部位の特定と、その部位の材質、鋼板などの厚さ、構造、防御性能の試験方法などを規定しています。
基準は、日本自動販売システム機械工業会に属する製造メーカーのみに公開され、犯罪手口の変化などを勘案し、随時見直しを行い、より堅固な自販機が製造されています。加えて、各自販機運営事業者様のご判断により、外付けの防犯用ドアロックを取り付けるなどの防犯対策を推進しています」
キャッシュレス決済対応の自動販売機の増加は窃盗被害の抑止につながっているのか。
「キャッシュレス決済端末の有無や現場の運用は所有者である飲料メーカーの意向によるものが大きい」としたうえで、次のように説明する。
「当会としては、キャッシュレス専用自販機自体の普及は進んでおらず、現金との併用が主流でありますので、状況に大きな変化は見られないと考えますが、現金取扱量が減ることで被害額を抑えられる可能性はあります」
同担当者は、自動販売機の安全性向上や被害防止に向けて、「堅牢化基準の周知徹底や新たな手口に対する抑止策の検討」を推進していくと話した。
SNSなどでは「自動販売機は日本の治安の良さの象徴」との声もあるが、被害が完全に収まる見通しは立っていない。飲料メーカーや業界団体には、引き続き対応が求められそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班