仙台市青葉区の繁華街・国分町で客引きがコロナ禍後、増加している。案内された店で高額請求や犯罪被害に遭う事例があり、被害対策弁護団が今月結成された。安全な街のため、県警が取り締まりを強化するほか、市も6月、警備会社による巡回活動を開始する。(小山太一)
「なんでこんなに」
「申し訳なくて、妻には打ち明けられていないんです」。客引きに案内された店でクレジットカードなどを不正に利用され、計約230万円をとられた県内の30歳代男性は肩を落とす。
昨年10月、仕事の飲み会帰りに国分町通りを歩いていると、30歳代くらいの男に声をかけられた。「ガールズバーすぐ行けますよ」。帰宅するつもりだったが国分町が久々だったこともあり、誘いに乗った。
30分ほど飲んで店を出ると、同じ客引きが待ち構えていた。「次どうですか?」しつこさに負けしぶしぶ次のガールズバーに入った。ウイスキーの水割りなどを飲むこと1時間。「そろそろ出たい」と伝えると、女性2人が現れ、頼んでもいない度数の強い酒が運ばれてきた。「まだいけるでしょ」。あおられて酒を口にしたところまでは覚えている。
午前6時半頃、路上で目が覚めた。ポケットには高額のカードの明細書が3枚。確認すると約180万円が利用され、キャッシュカードで50万円が引き出されていた。「なんでこんなに」。頭が真っ白になった。
男性は県警に被害届を提出。同店を経営する男(25)や従業員らが、男性のクレジットカードを不正に使った電子計算機使用詐欺罪で逮捕・起訴されるなどした。
44件摘発
同様の被害は多い。国分町を管轄する仙台中央署には昨年、ぼったくり被害の相談が約140件寄せられ、被害額は約8000万円に上っている。国分町の店舗も加盟する県社交飲食業生活衛生同業組合は「女性や学生が怖くて避けてしまう」とイメージダウンを懸念する。
コロナ禍の後、人の流れが戻るのに連動し、客引きも増えてきている。
市では、市職員が定期的に夜(午後6時~翌午前0時)、仙台駅西側や国分町の客引きの人数を目視で調査。2018年度、確認された人数(重複あり)は1日あたり延べ1079人。それが市の客引き禁止条例が全面施行された19年度は872人、コロナ禍の21年度は388人と激減したが、昨年度は727人と戻りつつある。
県警は、客引きが複数で仲間を作り活動し、案内先の店舗から報酬を受け取っているほか、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)とみて捜査。昨年は、執拗(しつよう)な客引きをしたなどとして、県迷惑行為防止条例違反や風営法違反の容疑で客引き44件を摘発した。過去5年で最多という。
広がる対策
仙台中央署は今月、トクリュウの特別捜査課を新設。客引きグループや、客引きと連携する店舗の取り締まりを強化している。
仙台市も対策を強化する。地区を巡回し、客引きに行政指導を行う指導員を3人増員し12人態勢とするほか、6月から委託先の警備会社「エグゼクティブプロテクション」(東京都)による巡回も行う。悪質な客引き行為をチェックする。
同社は東京都新宿区や大阪市などで客引き警備の実績があるといい、仙台市市民生活課の担当者は「巡回員がいることで、安心感にもつながる」と話す。
仙台弁護士会の弁護士18人は今月1日、悪質な客引きやぼったくり被害の救済を目指す被害対策弁護団を結成。ぼったくり店の経営者や従業員、客引きへの損害賠償請求などを目指す。
団長の高田英典弁護士は、客引きは店から高額な見返りを受け取れるため、客を連れて行くと指摘。「被害弁済をさせるようにし、客引きやぼったくりを経済的に見合わない行為にする必要がある」と強調している。
◆客引き禁止条例=仙台市中心部で風俗店や飲食店への客引きが多く見られることから、2019年4月に全面施行された。仙台駅西側や国分町地区などで客引き行為を禁止している。勧告と命令に従わないと5万円以下の過料が科され、氏名や住所も公表される。