障害者就労支援はどう食い物にされたのか 福祉団体で巨額不正受給か? 大阪市が詐欺容疑で刑事告訴・指定取り消し【ウラドリ】

「大阪を世界一ユニバーサルな街にする」そう掲げてきた福祉団体が、いま大きな批判にさらされています。 制度の信頼を揺るがしかねない重大な事態。専門家は「利用者の尊厳を奪い、事業所が金儲けをする一番卑劣な図式」と指摘します。元利用者からは「お金もうけのためだけに、この事業をやっているのではないか」という声も聞かれました。 前代未聞の“不正受給”。団体の利用者や職員への独自取材を通じて、そのカラクリに迫りました。 大阪府に住む40代の男性・Aさんには発達障害などの特性があり、数年前から障害者のための作業所「就労継続支援事業所」で働いていました。 Aさんに与えられていた肩書きは、事業所の「職業指導員」。他の利用者にパソコンの使い方を教えることなどが主な業務とされていました。 しかし、実態は――。(Aさん)「業務はほとんどなく、ほぼ自己学習でした。たまに外注で取ってきた仕事があって、納期が迫っているときにデータ入力をする、という程度でした。」 Aさんが勤務していたのは、障害福祉サービス事業を展開する「レーヴ」。この「レーヴ」を含め、就労事業所や放課後デイサービスを運営する法人を統括していたのが「絆ホールディングス」でした。 絆ホールディングスグループの事業所をめぐっては、以前から「支援の実態がない」といった声が上がっていました。 そして3月27日、大阪市は緊急記者会見を開き、就労継続支援A型事業所に対して障害者総合支援法に基づく行政処分を下しました。 市は、絆ホールディングス傘下の団体が運営していた「レーヴ」など4つの事業所について、認定を取り消す極めて重い処分を発表。 さらに、市が支給していた給付金を不正に受給していたとして、返還を求めました。その金額は4事業所の合計で、110億7650万7073円にのぼります。 他の自治体からの給付金も含めると、不正に受給した金額は150億円以上にのぼるとみられています。 Aさんは、「職業指導員」としての雇用契約書を保管していました。保管していた書類に記載されている給料は時給制。当初は時給1000円だったものが、数年の間に1600円へと昇給しました。Aさんは月に、十数万円から20万円前後の収入を得ていました。 一方、大阪市がAさんに対する福祉サービスの対価として、絆ホールディングス側に支払っていた給付金は、異常な伸びを示していました。 なんと、月額15万円台だった給付金は、数年後には月額500万円台、600万円台にまで膨み、給付金はわずか数年でおよそ30倍から40倍に跳ね上がっていたのです。 取材を進める中で、給付金が急増した背景として浮かび上がったのが、「36カ月プロジェクト」と呼ばれる仕組みでした。 就労継続支援事業所では、利用者が一般企業に就職し、半年以上継続して働くと、その成果に応じて事業所側に報酬が支払われます。絆側はこの制度を利用し、独自に「36カ月プロジェクト」と名付けた就労計画を進めていたのです。 利用者をいったん自社スタッフとして一般就労させ、半年が経過すると再び「利用者」に戻す。そして、再び自社スタッフとして雇用する――絆側は、就労計画でこの仕組みを利用。 本来であれば、一定期間に一度しか受給できない報酬のルールを、繰り返し申請することで報酬を得ていたとみられています。 障害者福祉制度に詳しい、関西福祉大学の谷口泰司教授は、「制度の抜け穴をつく行為」だと指摘します。(谷口泰司 教授)「一般就労と支援利用を行き来できる仕組みは、本来、利用者のためのものです。しかし、それを悪用しようとすれば、いくらでもできてしまった」 さらに、障害者の尊厳を傷つけた可能性についても言及しました。(谷口泰司 教授)「事業所の都合で、労働者と利用者の立場を定期的に入れ替えると、『自分は必要じゃなくなった』という失敗体験を積み重ねさせてしまう。利用者の尊厳を奪い、その上で事業所が金儲けをする。一番卑劣な図式だ」 取材班は、現役の絆グループ職員、40代男性のBさんにも話を聞きました。Bさんも「36カ月プロジェクト」の枠組みで、就労事業所から一般就労に移行した経験があります。Q. A型事業所を利用していた時と、一般就労になった時で違いは?(Bさん)「業務内容自体は、特に変わらなかったです。ただ、通所が減って、在宅勤務が増えました」 Bさんは在宅勤務中、具体的な業務を与えられることはなく、資格取得の勉強など自学自習が中心でした。そしていま、こんな思いが頭をよぎるといいます。(Bさん)「利用者から職員にはなったんですけど、振り返ると、『お金もうけのためだけに、この事業をやっているのかな』って思うことがあります」 絆グループの利用者や現役職員から相談を受けている労働組合には、今も問い合わせが相次いでいます。(労働組合担当者)「今回の報道で精神的な負担がさらに重くなり、夜も眠れない、将来が見えないという相談が多く寄せられています。中には『罪悪感を感じている』という人もいました」 労働組合にはいまも毎日のように相談が寄せられています。さらに担当者は、このように指摘します。(労働組合担当者)「障害者の就労支援が食い物にされたような実態です。就労支援というより、『ビジネス』として動いていたのではないか。問題は非常に根深いと思います」 そしてきのう5月1日、大阪市が代表者ら5人を、4月30日付けで詐欺容疑で刑事告訴していたことが新たにわかりました。 また市は、事業所が利用者を「就職させた」と見せかけ、過大に報酬を手にしていたとして、事業所の指定を取り消す処分も、きのう1日付けで出しています。 絆ホールディングスは30日の夜、ホームページに動画を公開し、こうコメントしています。(下川弘美・代表取締役)「今回の指定取り消しや不正とされた点につきましては、私たちとしても見解の相違があり、今後は法廷の場において主張すべき点は適切に主張し、誠実に対応してまいります」 市は、ペナルティも含めた110億円の返還について、督促状をすでに送っているいうことです。 障害者福祉制度の根幹を揺るがす、前代未聞の巨額不正受給問題。その影響は、いまも広がり続けています。(2026年4月22日放送・ABCテレビ「newsおかえり」『ウラドリ』より 5月1日加筆)