太陽系の果ての小天体に大気 常識覆す発見 冥王星以外で初、恒星の光の「にじみ」から

海王星より外側で太陽を回る小天体に極めて薄い大気があることを、国立天文台などの研究チームが発見した。こうした小天体は太陽系外縁天体と呼ばれ、太陽系形成時に惑星に取り込まれなかった、氷を多く含む天体とみられる。太陽系外縁部は、日本の探査機「はやぶさ2」が試料を持ち帰った小惑星リュウグウの母天体が生まれた場所とされる。大気を持つ外縁天体は準惑星の冥王星しか知られておらず、常識を覆した。4日付の英専門誌で発表した。
大気が見つかったのは「2002XV93」という小天体。冥王星に近い軌道で太陽を回り、観測時は太陽から約57億キロ離れていた。直径は約500キロで、月の約7分の1。表面温度はマイナス226度と推定される。
研究チームは令和6年1月、小天体がはるか遠くの恒星の前を日食のように横切る瞬間を国内4カ所で観測した。大気がなければ、背景の恒星の光は小天体に隠れると急に暗くなり、通過後に急に戻るとみられていた。
ところが長野県からの観測では、恒星の光が小天体の縁付近で約1・5秒、じわりと弱まった。福島県からの観測でも、光がゆるやかに弱まったような変化が見られた。成分は未解明だが、小天体を包む極めて薄い大気が、背景の光をわずかに曲げたと考えられた。
推定された大気圧は、地球の500万~1000万分の1ほどにすぎない。人が感じる圧力ではなく、ほぼ真空に近い。それでも、遠くの星の光をにじむように変化させるだけの大気が周囲に広がっていることになる。
この小天体の大気は、従来の常識を覆す謎だ。重力は地球の100分の1程度とみられ、大気を保つには弱すぎる。なぜ大気があるのか。チームは、気体が小天体内部からしみ出したり、別の氷天体と衝突したりした結果、一時的に生じた可能性を指摘している。
今回の発見で、太陽系外縁の小天体が従来考えられていたより多様な姿を持つことが示された。国立天文台の有松亘(こう)講師(太陽系天文学)は「こんな小さな天体に大気があるとは、最初のうち信じられなかった。今後はこの謎めいた大気の成り立ちや成分の解明に挑んでいきたい」と話した。