東京から近い千葉県内、映画やドラマのロケ誘致合戦…「聖地として脚光浴びたい」

映画やドラマなどのロケ誘致を巡る動きが千葉県内各地で活発化している。東京都内から至近距離の我孫子市は、大学などとフィルムコミッション(FC)に関する協定を結び、撮影環境を充実させた。隣の柏市もロケ誘致の専門部署を設けて体制を強化。「誘致合戦」が激しさを増す背景には、作品ゆかりの地を訪れる「聖地巡礼」などによる地域活性化への期待がある。(大森遥都)
「今回の連携によって『聖地』として脚光を浴びるようになればうれしい」
中央学院大(我孫子市)で3月下旬に開かれた市、同大、NPO法人「手賀沼フィルムコミッション」の協力協定締結式。手賀沼FCの高橋邦夫代表が意気込みを語った。
協定には、市内へのロケ誘致を活性化させるため、同大が施設をロケ地として提供することや、市や手賀沼FCが撮影場所の選定やロケハン(撮影の下見)で同大を支援することなどを盛り込んだ。
同市での映画やドラマなどの撮影件数は年々増加し、昨年度は75件と2021年度(41件)の2倍近くに増えた。ただ、ロケ地として有名な旧ファミレス店や公園、市庁舎などでの撮影が大半を占め、「限られた場所に頼る『一本足打法』になっている」(深田和彦・市あびこの魅力発信室長)と危機感があった。
中央学院大には、一般的な教室のほか、9階までの吹き抜け、高性能パソコン22台が並ぶeスポーツ教室、屋上ヘリポートなどがある。都心のオフィスを想定した撮影なども可能だ。星野順一郎市長は「撮影のバリエーションが増える。市内で撮れなかった映像を撮影でき、競争力が増す」と期待する。
我孫子市が「ライバル視」するのが、FC事業に近年力を入れている柏市だ。
柏市は23年度にFC専門部署を設置。市ホームページにロケ地の情報を掲載するページを設け、公共施設だけでなく、ホテルや物流センター、飲食店といった民間施設も紹介している。
昨年10月~今年1月には、市内でロケが行われた作品を紹介する展示を市役所や商業施設など4か所で開催し、市の魅力をアピールした。
撮影場所は、ビルなどが立ち並ぶ柏の葉地域だけでなく、市内の寺や川沿いなど多岐にわたる。太田和美市長は「様々な顔を持つ(柏市の)街の特徴が、ドラマや映画の撮影に向いている」とアピールする。
各自治体がFC事業に力を入れる背景には、作品をきっかけにした観光需要への期待がある。
市原市は、アマゾンの「Prime Video」で配信された人気ドラマ「推しの子」のロケに協力し、小湊鉄道上総鶴舞駅や高滝湖などでロケが行われた。市が、公式Xや「広報いちはら」(昨年1月号)などで紹介すると、多くのファンが訪れた。市シティプロモーション推進課は「市の認知拡大につながっている。今後も力を入れていきたい」と強調する。
ロケに協力するだけでなく、関連イベントで誘客に取り組んでいるのが旭市だ。22年に市観光物産協会や市商工会などと連携し、官民一体の「あさひロケーションサービス協議会」を発足させた。同時に出演者らの宿泊やロケ弁当の手配などを担うボランティア組織「旭おっぺし隊」も設立。24年には市内事業者らが参加する「ロケ弁グランプリin旭市」を全国で初めて開催した。
今年1~2月には、市内が主要ロケ地となった映画「五十年目の俺たちの旅」(俳優の中村雅俊さん監督)の公開に合わせ、ロケ地を巡りながら、観光やグルメを楽しめるスタンプラリーを実施するなど工夫をこらす。
千葉県フィルムコミッション(千葉市美浜区)の末吉現史マネジャーは「県内には海や山といった自然から、都会の景色までバリエーション豊かな風景がそろっている。制作会社などの人気が高い」とし、「各自治体がそれぞれの強みを打ち出しながら、今後も誘致の動きが熱を帯びていくだろう」と指摘している。
◆フィルムコミッション(FC)=映画やドラマなどの撮影の相談に乗ったり、ロケの手続きを支援したりする組織。2000年に大阪府に国内で初めて設立された。県内では、県から事業を受託する県フィルムコミッション(千葉市美浜区)のほか、全54市町村が窓口を設けている。