《議論を許さぬサナエ流》「メールで回答するだけ」「電話がまったくつながらない」高市早苗首相のコミュニケーションに参謀たちも苦笑

政権中枢の内幕を伝える “匿名”政治コラム「赤坂太郎」 。人を寄せ付けない高市早苗首相に対して、周囲の不満が鬱積しているという(文中敬称略)。
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どす黒いまでの孤独――。
自民党副総裁の麻生太郎が、首相在任中の立場を語った言葉だ。最終的に自らですべてを決断し、責任を一身に引き受けなければならない首相の重責を表現した言である。
だが、麻生が首相の座に押し上げた高市早苗の「孤独」は、いささか様相を異にする。国家の命運を独り背負う矜持や覚悟ゆえではなく、単に人を寄せ付けないのだ。
4月12日、自民党結党70年を記念して、「自民党の歩みと未来への使命」と題する「新ビジョン」を発表したが、これも高市が首相官邸の部屋に1人こもって、文案に徹底的に赤字を入れた。党新ビジョン策定本部の座長である齋藤健が、打ち合わせをするために高市のもとを訪ねたところ、高市は修正した文案を渡して、こう言い放った。
「この通りにしておいて」
上意下達のみ。まるで議論を許さないのだ。
官邸にいるスタッフたちでさえ、首相と面と向かって話す時間は、ほとんどない。
内閣官房参与の今井尚哉は4月、高市と対面で話すことはなく、基本的にメールで連絡を取り合っていると『週刊文春』の取材に答えた。高市が3月の訪米前、米大統領トランプへの「手土産」としてホルムズ海峡に海上自衛隊を派遣する意向だったのに対し、今井が首相執務室に怒鳴り込んで止めた、と情報誌『選択』に書かれたのを否定するためだったが、高市との間に壁があることを改めて認めた格好だ。
メールでの連絡が主体なのは、他の参謀たちも同じだ。前国家安全保障局長で、首相の外交アドバイザー役を担う内閣特別顧問の秋葉剛男も「総理からメールで質問がきて、メールで回答するだけ」。今井の子分格である内閣広報官の佐伯耕三も「高市にはまったくモノを言えない」(官邸筋)というお寒い状況である。
見るに見かねた自民党関係者が、高市の実弟にして秘書の知嗣に「メールはともかく、電話がまったくつながらない」と苦言を呈したところ、知嗣は「私もほとんど電話に出てもらえないんです」と苦笑する始末だった。
周囲に相談せず「独断専行」に走る高市に対して、党内に苛立ちが立ちこめている。その空気はさすがに高市自身も感じている。だが、分かってはいるが、党内や国会で調整の実務を担った経験がほとんどなく、すぐには態度を改められない。だからこそ、永田町ではこんな噂が飛び交っている。
「秋に予定されている内閣改造が前倒しされるようだ。7月に国会が終了したら、着手するらしい」
人事こそ権力の源泉だ。ポストをちらつかせれば、周囲は黙る。
周囲は木原の心労を懸念
首相が対面で言葉を交わす数少ない相手が、官房長官の木原稔だ。ただし、具体的な指示はメモで手渡される。それに従って、木原は各省庁への指示や党側との調整に奔走する。国会対応を高市に丸投げされながら、毎晩、番記者たちのオフレコ取材にも応じ、仕事をこなす。さすがに疲労の色は隠せず、官邸内では「総理の体調も心配だが、官房長官のほうが先に倒れるのではないか」(官邸関係者)と囁かれている。
高市は直接の対話を好まないが、ネット空間では能弁である。2026年度予算が参院で審議中だった4月5日には、高市が参院予算委員会の集中審議への出席に消極的だとする報道に対し「X」で反論した。
「私が参議院予算委員会の集中審議に応じない意向を示していたとの報道は、全く事実ではありません」
続けて、国会の求めがあれば出席すると答弁していることに触れて、「参議院自民党幹部にも伝えていました」と、なかば責任は参院幹部にあると言わんばかり。
※この続きでは、 消費税減税 の議論について触れています。約4600字の「 赤坂太郎」 全文は、「文藝春秋」2026年6月号および、月刊文藝春秋の電子版「文藝春秋PLUS」に掲載されています。
(赤坂 太郎/文藝春秋 2026年6月号)