マンジャロの転売容疑で大阪府警が3人を書類送検 〝せ薬〟としての使用は「命の危険」も

糖尿病治療薬「マンジャロ」をSNSで無許可で販売するなどしたとして、大阪府警生活環境課は2日、医薬品医療機器法違反容疑で大阪府や奈良県の22~35歳の男女3人を書類送検した。いずれも容疑を認めているという。
マンジャロは本来の目的を逸脱し、若い女性を中心にダイエット目的での服用が広がっている。医師の処方箋が必要にもかかわらず、こうした需要を見越してSNSで販売を持ち掛ける不正な投稿が多発。マンジャロの不正販売に関する摘発は大阪で初めてで、全国的にも珍しいという。
3人は、大阪市住吉区のアルバイトの女(29)▽奈良県広陵町の大学生の男(22)▽大阪府枚方市の会社員の女(35)。3人につながりはなく、それぞれ別に事件に関わっていた。
会社員の女の書類送検容疑は昨年12月、許可なく女性2人に約6000~7000円でマンジャロを販売したとしている。アルバイトの女と大学生の男は2月中旬、自宅で販売目的で保管したとしている。
同課によると、3人のうち2人は病院でマンジャロの処方を受け、残る1人はSNSで入手。いずれもSNSで転売を持ち掛け、大学生の男は約5万円の利益を得ていたとみられる。
SNSでの不正投稿の多発を受け、府警は昨年末ごろからサイバーパトロールを強化。不正な投稿を調べた結果、3人の関与が浮上したという。
不正販売への警告が激増 7年度は375件
本来の目的と異なり、〝痩せ薬〟としての使用が広がるマンジャロだが、重篤な副作用の危険性もあり、専門家は「人によっては命の危険もある。美容目的での安易な使用は控えるべきだ」と警告する。
「1カ月でマイナス8キロ」「自然と食欲が減る」。SNS上ではマンジャロのせ効果を喧伝(けんでん)する投稿が目立つ。
マンジャロは令和4年に製造販売の承認を得た2型糖尿病の治療薬。血糖値を下げるインスリンの分泌を促し、食欲も抑制される。本来は食事療法や運動療法を十分に行った上で、血糖コントロールが不十分な場合に医師が使用を検討する。
服用には医師の処方箋が必須にもかかわらず、SNSでは売買に関する投稿が散見され、東京都は平成31年から医薬品の不正売買への警告を実施。直ちに販売を中止するよう呼びかけている。
都によると、糖尿病治療薬に関するこうした警告は令和5、6年度はいずれも2件だったのに対し、7年度には375件に急増。担当者は「SNSなどで不正売買された医薬品は品質や保管状態が保証されない上、偽造薬の恐れもある」とし、「自身の安全のためにもSNSなどで安易に購入しないでほしい」と呼びかけている。
美容クリニックでの処方「倫理上重大な問題」
不正売買とは別に、医師の診断を受けているとはいえ、美容クリニックやオンライン診療を通じてダイエット目的の自由診療として糖尿病治療薬が処方されるケースも増加。減量に成功したとするSNSのインフルエンサーを広告塔に据えてダイエット効果を強調するサイトもある。
ダイエット目的の場合、慎重な診察を経ず、簡単な聞き取りなどだけで処方されることもあるといい、日本医師会などは5年、糖尿病治療薬のダイエットへの利用を「禁止すべきだ」との声明を出した。
順天堂大学の田村好史教授(代謝内分泌内科学)は、適応がない健康な女性がマンジャロなどのインクレチン関連薬を美容・痩身(そうしん)目的で使用するリスクについて、栄養失調や貧血、骨密度の低下のみならず「減量に伴いメンタルヘルスの問題が顕在化、悪化したり、月経異常を来して不妊の原因になったりする可能性がある」と指摘する。まれに急性膵炎(すいえん)や、肝臓や胆のう、胆管に障害が起きる「肝胆道系障害」など重篤な副作用が起こる危険性もある。
一部で自由診療として簡単に処方されている現状に対し、「医学的適応がない人に美容、痩身目的でリスクを軽んじて処方するのは医療倫理上、重大な問題。注意喚起にとどまらず、広告の在り方や、十分な診療を伴わないオンライン診療での処方も含め、こうした使用を抑制する実効性ある制度的対応が必要だ」としている。